指導変革の軌跡 長崎県立諫早(いさはや)高校「進路観の醸成」
長崎県立諫早(いさはや)高校

長崎県立諫早(いさはや)高校

2007年に創立96周年を迎えた。「志の教育」を教育目標として、徳・知・体の調和のとれた、社会に有為な人材の育成を目指す。03年度に理数科が新設され、SSHに指定された。部活動では駅伝部女子が10年連続で全国大会入賞をしている。

設立●1911(明治44)年

形態●全日制/普通科・理数科/共学

生徒数(1学年)●約320名

07年度進路実績●国公立大には東京大、東京工業大、大阪大、九州大、長崎大など249名が合格。私立大には、早稲田大、東京理科大、中央大、立命館大、西南学院大、福岡大など延べ216名が合格

住所●長崎県諫早市東小路町1-7

TEL●0957-22-1222

WEB PAGE●http://www.isahaya-highschool
.ed.jp/


石山雅晴

▲長崎県立諫早(いさはや)高校

石山雅晴

Ishiyama Masaharu

教職歴24年目。同校に赴任して5年目。進路指導部主任。「自信と謙虚さを併せ持つ生徒を育てたい」

渡邉美和子

▲長崎県立諫早(いさはや)高校

渡邉美和子

Watanabe Miwako

教職歴23年目。同校に赴任して9年目。CDA委員会委員長。「CDAを通して夢を実現させる力を身につけてほしい」

福田公彦

▲長崎県立諫早(いさはや)高校

福田公彦

Fukuda Kimihiko

教職歴23年目。同校に赴任して5年目。2学年主任。「志を持った生徒を育てるため、私自身も夢を語っていきたい」

松尾英隆

▲長崎県立諫早(いさはや)高校

松尾英隆

Matsuo Hidetaka

教職歴20年目。同校に赴任して8年目。進路指導部副主任。「生徒が夢を見つけられるよう応援したい」

田川耕太郎

▲長崎県立諫早(いさはや)高校

田川耕太郎

Tagawa Kotaro

教職歴15年目。同校に赴任して10年目。3学年主任。「モットーは『大胆にして細心』。生徒にもそれを伝えていきたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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指導変革の軌跡87


長崎県立諫早(いさはや)高校「進路観の醸成」

早期から進路意識を喚起させ 志を高く持てる生徒を育てる

● 実践のポイント
「テーマ学習」や「学年別講演会」、小論文模試など、早期から小論文指導を徹底
1年次から「志望理由書」を書かせ、明確な志望理由を描く力を身につけさせる
後期試験まで全校体制で取り組み、最後まで諦めない「粘り強さ」を養う

「CDA学習」により「志の教育」を具現化

 きめ細かな進路指導と小論文指導で知られる長崎県立諫早高校は、2002年度、これらを融合させた独自の教育プログラム「CDA学習」を開始した。CDAとは、「理解(Comprehension)」「発見(Discovery)」「志(Aim)」の略。同校は、生徒一人ひとりが志を持ち、実現に向けて努力する「志の教育」を教育目標の一つにしている。これを具現化するために導入したのが、CDA学習だ。小論文指導などを通して、生徒に「書くこと」「情報収集」の重要性を自覚させ、「学ぶこと」「働くこと」の意義を考えさせる。
 02年度、同校は大きな転機を迎えていた。新教育課程の施行、完全学校週5日制の導入に加え、長崎県の公立高校入試が03年度に単独選抜となることが決まっていた。更に、同校に03年度から理数科が設置されることが決まり、諫早高校の新しい姿を内外に示す必要があった。
 学校を取り巻く環境の変化と共に、生徒の気質が変化していることも大きな課題だった。保護者の影響を受けて、進路選択の視野が狭くなっている生徒が増えていると、多くの教師が感じていた。進路指導部主任の石山雅晴先生は、次のように話す。
 「今の保護者の多くは安全志向が強く、無理に難関大を受けるより、多少難易度を下げてでも自宅から通える大学を希望します。大学で資格を取ってきちんと就職してくれれば、それでよいという保護者が増えているようです。生徒が幅広い選択肢の中から自分の希望に適した進路を選べるようにするためには、多様な進路の可能性を示し、生徒自身に夢を持たせることが必要だと考えました」
 より明確で高い志を生徒に持たせるためには、学習指導だけでなく、幅広い視野を持たせるための進路指導が必要になっていた。

「テーマ学習」「学年別講演会」で幅広い進路観を醸成

  02年度、同校は既存の小論文委員会を「CDA委員会」に改め、「志の教育」を軸とする指導体制を整えた。
 既存の小論文委員会は、国公立大の個別学力試験対策のために3年次に行う小論文模試の事前・事後指導が主な役割だった。一方、CDA委員会では、書き方を中心とした小論文指導に、幅広い職業観・進路観の醸成を促す取り組みを融合させることを目指した。委員会のメンバーは、進路指導部主任と各学年の代表者4名の計13名。同委員会発足を牽引した渡邉美和子先生は、次のように話す。
 「志望の幅を広げられず、進路選択に行き詰まる生徒は少なくありません。視野を広げさせるためには、大学で何を勉強するのか、自分の力を社会でどのように生かしていくのかを、1年生から考えさせることが必要です。早くから小論文指導を徹底させ、学部・学科研究や進路学習につなげていくことで、進路意識がより明確になると考えました」
 CDA学習には、週2回の「テーマ学習」、小論文模試に向けての学習、外部講師による小論文模試の解説や小論文入試についての学年別「CDA講演会」などがある。CDA学習に充てられる時間は、始業前の10分間や土曜学習会、課外授業の一部などで、決して多くはない。CDA委員会が年度当初に学習計画を示し、教科担当や学年・分掌と交渉して、時間を確保するよう努めている。
 テーマ学習の教材には、ベネッセの『小論文アプローチ』を用いる。環境や福祉、国際理解などテーマごとのワークに取り組み、社会問題と学問の関連について理解を深めていく。また、補足的に、新聞・雑誌の記事から教師がプリント教材をつくり、社会問題や学問への関心を高めさせる。それらの集大成として小論文模試を行う。以前は3年次に1回のみだったが、CDA学習の導入後は、1、2年次に各1回、3年次で2回行っている。


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