子どものころから、ものを考えることが好きだった私にとって、算数・数学はゲーム感覚で楽しむ娯楽の一つでした。小・中学校時代は戦争の真っただ中。大した娯楽もないこの時代にあって、頭を使って考えることが何よりの楽しみだったのです。しかも、数学は、いろいろな解釈が成り立つ国語や歴史などと違い、答えさえ証明できればだれにも文句は言えません。そんな明解さも、私の性に合っていました。
戦中戦後の教育環境はひどいものでした。教科書もろくにないため、先生は仕方なく何度も同じような問題を出していました。しかし、今思えば、この基本的な内容を繰り返し学んだおかげで、基礎をしっかり固めることができたと思います。
高校時代には、尊敬できる先生との出会いがありました。当時、私は教科書の練習問題をひねって新しく問題をつくり、先生に解いてもらうのを楽しみにしていました。中には「そんな問題を解く必要はない」と、はぐらかす先生もいましたが、「タンジェント」というあだ名の先生は違いました。その場でわからなくても、数日後には「広中、できたぞ!」と言って必ず解答を示してくれる。先生を試してやろうといういたずら心でしたが、そんな私の挑戦を先生は真正面から受け止めてくれたのです。先生の熱意を感じた私は、ますます数学が好きになりました。
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