今思えば、私がこの証明を成し遂げられた最大の理由は、愚直なまでの粘り強さにあったと思います。世の中には、時間の制限があるからこそ良い仕事ができる人もいます。しかし、私は高校時代から「時間とは戦わない」と決めていました。というのも、私は一生懸命に授業を聞いてもその場では理解できず、2、3週間ほど経ってからやっとわかることが多かったからです。このような自分の頭の働き方がわかったとき、私は人の2倍の時間をかけて勉強しようと決めました。特に大学1、2年生のころは、化学や生物など必要以上に多くの科目を履修し、3畳一間の下宿で朝晩、ミカン箱の机に向かって猛勉強したものです。
この経験は、将来の方向性を見定める上で大いに役立ちました。たとえ短期間であっても、いろいろな学問に一生懸命取り組むと、自分の性格や適性が見えてきます。実験には興味がわかない、数学が出てくると楽しい…。自分自身をいろいろ試してきたからこそ、本当の自分が見えてきたのだと思います。
高校生の皆さんも、生涯をかけて取り組む目標を見定めたいのであれば、勉強であれスポーツであれ、とにかく一生懸命打ち込んでみることです。知識や技術の習得はもちろん大切ですが、より重要なことは、そのプロセスを通して、自分自身を発見していくこと。将来あんな人になりたい、こういう職業に就きたいという憧れを抱いても、自分の適性や素質に合わなければ、心の底から楽しむことはできません。一度でもよいですから、自分自身と真剣に向き合うことが、将来を切り開く第一歩になるのです。
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