生徒同士の結束、集団に対する帰属意識を涵養(かんよう)することも、研修の重要な目的だ。特に校歌斉唱を重視する。班に分けて、何度も校歌を斉唱させる。「帰属意識を高めると共に、自分の殻を破る第一歩になる」と、小迫先生。「スタンツ」では、クラスごとに出し物を企画し、皆の前で披露する。劇や歌など、何をするのも自由。合宿中、唯一生徒が自主的に作成できるプログラムだが、計画を練る時間が特別に確保されているわけではない。食事時間を早めに切り上げるなど、生徒同士で話し合いながら時間を捻出し、形にしていかなくてはならない。単なるレクリエーションにとどまらない、主体性や団結心を鍛え上げる場となっている。
最後は、生徒一人ひとりが手に持ったキャンドルを消していく「キャンドルのつどい」で、合宿は静かに幕を閉じる。物音一つしない真っ暗な会場で、クラスの団結を象徴するキャンドルの炎を見ながら3日間を振り返り、これから始まる高校生活に思いをはせる。
「たった3日間で生徒はみるみる変わっていく」と、中野先生が話す通り、合宿前は声も出せなかった生徒が大きな声で挨拶し、きびきびと時間通りに動けるようになるという。だれよりも生徒の変化に驚くのは保護者だ。「目が合っても挨拶しなかった息子が、しっかり挨拶できるようになった」「無口だったが、学校のことをしゃべるようになった」など、毎年多くの保護者が、わが子の変貌ぶりに目を見張るという。 |