各校の事例に見られる通り、学校・エリアの特性は異なるが、「中学生を高校生にする」「生徒を大人にする」ための生徒指導には、共通する考え方やアプローチがあった。そのポイントを整理してみたい。
生徒には、「ルール遵守の態度」「基本的な生活習慣」が入学当初から確立されているわけではない。しかし、そうした態度が身につかなければ、充実した高校生活を送ることはできない。特に導入期段階では、新入生を「自校の高校生にする」ために、挨拶・服装・時間厳守の指導や、生活習慣を正す指導に、統制的に取り組む学校が多い。 「毅然とした粘り強い指導」「最後の1人まで見逃さない指導」によって、できるだけ早期に「当たり前のことを当たり前にできる」生徒の育成を目指していきたい。
多くの伝統校には、「体育祭」「生徒会活動」などに代々受け継がれてきた生徒文化がある。そうした場で、生徒は先輩・後輩・仲間と主体的にかかわり合うことによって、先輩の言動を見習い、自分の生活態度を改めたり、仲間と共に挫折を乗り越える体験から自己肯定感を高めたりする。 統制的なしつけ指導は「教師からの教え込み」であるが、それだけではなく、生徒中心に取り組ませる活動を取り入れることで、生徒の自律的な態度を育んでいく機会をつくりたい。
教師間で生徒指導の方針がぶれていると、指導内容が一貫せずに、生徒からの信頼を失いかねない。そこで、こまめに学年会や研修会などを開いて指導方針を確認し、指導の統一を図っていくことが重要となる。初めて担任を受け持つ教師に対して、取り組みを徹底してもらうためにマニュアルを用意する学校も見られる。 指導方針を統一させるためには、生徒の実態を客観的に把握することも必要だ。学習状況や進路意識について、入学前や入学時に調査しておきたい。
生徒と教師の関係が良好でも、生徒と保護者、教師と保護者の関係がぎくしゃくしていると、指導の効果は上がらない。保護者会や三者面談、クラス通信などを通して、保護者とコミュニケーションを図る工夫をしたい。保護者の協力を得ることで、より生徒指導の効果が高まるだろう。
統制的なしつけ指導を生徒にとって意味あるものとし、生徒が自律的な行動を取れるようになるための土台として、生徒と教師の信頼関係は最も重要である。生徒は教師をよく見ている。生徒に厳しさを求める以上、教師も自らを律する必要があるだろう。「教師による率先垂範」「教師には生徒以上に厳しさを求める」姿勢を学校として貫き、生徒との信頼関係を強め、生徒指導の効果を高めている学校も見られる。