この壁を乗り越えさせる上で、重要な要素となるのは「関係性」の概念です。教師が表面的に指導するだけでは、生徒は「先生は仕事だから言っているのだろう」としか思いません。しかし、生徒にとってその教師が人間的に一目置ける人、自分のことを十分理解してくれている人であれば、その指導や言葉は格段に浸透します。面談で個別の相談に乗る、保護者と連絡を取り合う、教師同士が生徒の情報を共有する…。そうした活動を通して生徒と信頼関係をつくることで、生徒の中に教師の指導を素直に受け入れられる素地が生まれ、より効果的な指導が可能になるのです。
また、高校生活の中で生徒が感じるさまざまなストレスを、できるだけ早く克服させることも、生徒の動機づけに大きな影響を及ぼします。この「精神的回復力(=レジリエンス)」が働く要因としては、生徒自身の感情調整力も重要ですが、もう一つ大切なのが生徒を取り巻く環境です。生徒一人ひとりに目を配る丁寧な指導、生徒同士が支え合う仕掛け、居心地の良いクラスづくりなど、レジリエンスを高める要素を高校生活のあらゆる場面に埋め込んでおくことが大切です。
ただ、それをするには、教師個人の努力だけでは限界があります。学校が一体となって指導にあたる体制を整えることが必要であり、そのことが更に学校に対する生徒の信頼感を高めることにもつながるのです。 |