福岡県西方沖地震について、10年ほど前に九州大の先輩たちの手で行われた調査結果と比較する形で、地震の前後での振動特性の変化と地震との関係を調査しています。町に出て、民家に振動計を置かせてもらい、15分くらいかけて調べます。建物は普段から人が気づかないくらい、わずかに揺れています。その揺れ方を調べると、建物がどういう地震の揺れ方に一番強く反応するかがわかり、その特徴が地震の前後で変化していれば、目に見えない部分にひびが入っているかもしれません。
地震が起きたあと、見た目で大きく壊れていないと、一般の人は耐震診断にはなかなか取りかからないものです。でも、振動計による微動計測は短時間で済みますし、費用もわずかです。そういう意味で、自分の調査が人々の意識を変えるきっかけになればという思いもありました。
実際、私が計測をしたケースで、最初は興味を示さなかった人が、あとになって「耐震診断についてもっと知りたいので教えてほしい」と連絡をくれたこともあります。自分の研究が人の役に立ったと思うとやはり嬉しいですね。研究が社会のためになるというのは、こういう小さなことの繰り返しでもあるんだろうなと思いました。
建物というのは、造る人のためではなく、使う人のためにあるということを、今の研究を通して、私は改めて教わったような気がします。 |