未来をつくる大学の研究室 地震工学
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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大学院での学び
人々の生活にダイレクトに影響を与えることにやりがい

 福岡県西方沖地震について、10年ほど前に九州大の先輩たちの手で行われた調査結果と比較する形で、地震の前後での振動特性の変化と地震との関係を調査しています。町に出て、民家に振動計を置かせてもらい、15分くらいかけて調べます。建物は普段から人が気づかないくらい、わずかに揺れています。その揺れ方を調べると、建物がどういう地震の揺れ方に一番強く反応するかがわかり、その特徴が地震の前後で変化していれば、目に見えない部分にひびが入っているかもしれません。
 地震が起きたあと、見た目で大きく壊れていないと、一般の人は耐震診断にはなかなか取りかからないものです。でも、振動計による微動計測は短時間で済みますし、費用もわずかです。そういう意味で、自分の調査が人々の意識を変えるきっかけになればという思いもありました。
 実際、私が計測をしたケースで、最初は興味を示さなかった人が、あとになって「耐震診断についてもっと知りたいので教えてほしい」と連絡をくれたこともあります。自分の研究が人の役に立ったと思うとやはり嬉しいですね。研究が社会のためになるというのは、こういう小さなことの繰り返しでもあるんだろうなと思いました。
 建物というのは、造る人のためではなく、使う人のためにあるということを、今の研究を通して、私は改めて教わったような気がします。

高校生へのメッセージ
幅広い知識を持つことが自分の研究を豊かにする

 調査で一番大変だったのは、振動計を置かせてもらう許可を取ることでした。私は福岡で2年間に渡って79棟を調査しましたが、地震が起きた直後は協力的でも、1年くらい経つと怖さを忘れてしまうのか協力を得るのが難しくなるんです。だから、この研究に興味を持ってもらえるよう、噛み砕いて説明しなければなりません。データ分析よりも調査でのコミュニケーションに苦労しました。
 この経験から、私は調査のときにコミュニケーションが円滑にできるよう、幅広い知識、話題を持っておくことが大切だと実感しました。また、論文をまとめる際には、英語や国語の力が必要です。高校生のとき、小論文を学んでおけばよかったと少し悔やむこともあります。自分の専攻だけではなく、何でもやってみることが大切だと思いますよ。


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