指導変革の軌跡 福島県立安積黎明高校「導入期指導」
福島県立安積黎明高校

福島県立安積黎明(あさかれいめい)高校

「恕(じょ=思いやり)」を校訓として、豊かな知性と共生社会に生きる共感と思いやりの心を育む。郡山地区を代表する進学校であり、部活動も盛ん。特に、コーラス部は国内屈指の実力を持ち、「全日本合唱コンクール」では27年連続で金賞を受賞。

設立●1911(明治44)年

形態●全日制/普通科/共学

生徒数(1学年)●約360名

07年度進路実績●国公立大には北海道大、東北大、筑波大、お茶の水女子大、東京学芸大、横浜国立大など185名が現役合格。私立大には、青山学院大、津田塾大、法政大、明治大、早稲田大など延べ355名が合格。

住所●福島県郡山市長者2-3-3

TEL●024-932-0443

WEB PAGE●http://www.asakareimei-h.
fks.ed.jp/


井戸川方志

▲福島県立安積黎明高校

井戸川方志

Idogawa Masashi

教職歴27年目。同校に赴任して4年目。教務主任。「学校は生徒に力をつけさせる場という意識で指導に臨みたい」

佐藤伸也

▲福島県立安積黎明高校

佐藤伸也

Sato Shinya

教職歴29年目。同校に赴任して2年目。1学年主任。「素直な気持ちで学習や進路に取り組める生徒を育てたい」

鈴木芳人

▲福島県立安積黎明高校

鈴木芳人

Suzuki Yoshito

教職歴21年目。同校に赴任して8年目。進路指導部長。「私自身、自律を心がけながら、生徒にも促していきたい」


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指導変革の軌跡90


福島県立安積黎明(あさかれいめい)高校「導入期指導」

導入期指導を体系化・組織化し校内で継承する体制を構築

● 実践のポイント
入学直後の特別指導と「学習プログレス」により、学習の仕方や学習習慣の定着を図る
意識を途切れさせないように、進路行事や定期考査・実力テストなどをバランスよく配置
PDCAサイクルを意識し、ブラッシュアップを図りながら指導体制を継承

県内一斉共学化により上位層が他校に流出 

 長らく導入期指導が手薄と言われていた福島県において、先鞭をつけたのが安積黎明高校だ。教務主任の井戸川方志先生は、当時の問題意識について、次のように述べる。
 「福島県の高校は伝統的に学年色が強く、教科指導や進路指導など、あらゆる指導が学年主導で行われる傾向がありました。学年独自の創意工夫は大切ですが、年度ごとに進路実績にバラツキがあったのも事実です。コンスタントに進路実績を上げられるよう、学校全体で組織的・計画的に指導にあたる体制を整える必要がありました」
 同校が導入期指導に着目した背景には、同校を取り巻く環境の変化もある。一つは、新教育課程の導入により、学力に問題を抱える生徒が増えてきたこと。もう一つは、高校の男女共学化の影響だ。1993年、福島県は22校あった男女別学の県立高校をすべて共学化するという方針を打ち出した。安積女子高校として長い伝統を誇ってきた同校も01年度に共学となり、校名を安積黎明高校とした。しかし同時に、近隣に設置されている、旧制中学の流れをくむ男子校も共学化したことで、今までとは異なる学力層が入学してくるようになった。
 このような環境の変化の中で、安積黎明高校の新たな指導スタイルを確立することが急務となっていたのである。

1、2年次を見通した導入期指導を構築

 04年11月、井戸川先生をチーフとして、国数英の教科担当者からなる「導入期指導検討委員会」が発足した。05年度からの実施に向けて、導入期および年間の指導計画を策定し、導入期指導の骨格をつくり、それらを学校全体で進める体制を構築した。
 導入期指導というと、入学前後の指導を思い浮かべがちだが、同校では単に「中学から高校へのブリッジ」としては捉えていない。同校では、導入期指導を3期に分けている。第1期は入学内定者、合格者への指導期で、中学生への内定通知日から入学式前日までとなる。第2期は新入生への導入期で、入学式当日から1年次夏休み明けまで、第3期は継続指導期として、1年次2学期から2年次夏休み明けまでを視野に入れる。導入期指導といっても入学時にとどまらず、1、2年次のそれぞれの時期にある課題をいかに解決していくかという観点から、長期スパンでの体系化が図られた。
 指導計画でそれまでと大きく変更したのが、第1期=入学前の指導である。従来入学後に行っていた進路適性検査や校歌指導などを入学前に移行させた。加えて、卒業生による進路講演会を開き、大学生活の現況や高校生活へのアドバイスなどを語ってもらった。その狙いを、1学年主任の佐藤伸也先生は次のように述べる。
 「入学前指導の目的は、指導を先取りすることで4月からの指導が円滑になるようにすること、高校生活に対するモチベーションを喚起することの二つあります。特に、進路講演会は生徒にインパクトを与えたようです。『自分も先輩のようになりたい』『部活動と学習を両立させたい』といった感想を寄せる生徒が少なくありませんでした」
 福島県では高校入試をⅠ期からⅢ期に分けて実施しており、Ⅰ期入試合格者は2月に決まる。そこで、合格内定者に対して2月初旬に国数英の課題を送付し、合格発表日に課題テストを行う。これにより、入学までの2か月間、学習の意識を継続的に維持させているのである。


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