「学校が『学校便り』などで保護者に情報を発信しても、きちんと保護者の手に届いていなかったり、情報がその場限りで終わっていたりして、保護者が学校の全体像を理解しにくく、同じような問い合わせが何度も来ることもあります。学校の基本情報を網羅した冊子をあらかじめ配付すれば、情報のギャップが防げるのではないかと考えました」
同校では生徒の成績に関する問い合わせが特に学期末に多くなる。しかし、『城中NAVI』であらかじめ学習指導の方針を示しておけば、保護者は過度な不安や疑問を抱かずに済む。また、学校に問い合わせをする場合でも、冊子に書かれた内容を基に、ポイントを絞って質問できるというわけだ。
『城中NAVI』が初めて配付されたのは、2005年度のことだ。04年度に学校事務の山田貢主査が他校の職員の有志と大阪府吹田市立片山小学校を視察し、同校が保護者の意見を採り入れて作成した学校案内『片小ナビ』を手にしたのがきっかけだった。
「『学校と保護者が一緒につくる』というスタイルがまず面白いと思いました。保護者は自分の中学時代と今の中学校が同じだと思いがちですが、現実にはかなり違っています。また、学校も思っているほどにはきちんと保護者の現状を把握しているわけではありません。学校案内づくりを通して、双方の理解を深められたらと考えました」(山田主査)
校長に提案すると、すぐに『城中NAVI』作成が決定。保護者・生徒と一緒に編集を進め、学校のありのままの姿を知ってもらおうというコンセプトで制作された。原稿は、教師が作成したあとにPTA役員に目を通してもらった。校内では日常的に使われている「学活」「教育課程」などの言葉が保護者にはわかりにくいなど、学校にとっては意外な指摘を受けた。完成した第1号の中で、最も評価が高かったのは進路関係のページだった。
「以前は3年生で配っていた資料を『城中NAVI』に掲載しました。3年間の進路指導の流れや卒業後の進路などについて、『入学時に先のことが見えるのは助かる』という反響がありました」(山田主査)
補助教材費や校外学習活動費など、毎月の学校徴収金の前年度実績を詳細に掲載したことも、保護者に好評だった。「どのような理由で、いくらお金がかかるのかをきちんと示すことで、集金時のトラブルを防止できていると思います」と山田主査は語る。
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