教科指導最前線・日本史

村上育朗

岩手県立大船渡高校
村上育朗

Murakami Ikuro
教職歴35年目。同校に赴任して7年目。進路指導主事。「教師の立場に立ちつつも生徒の目線で物事を見ながら、指導するよう心がけています。品格のある生徒を育てたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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教科指導最前線

日本史

最小限の板書、「語り、問いかける」授業で生徒の理解を深める

教師が答えを与えることで、生徒の考える力が失われる――。
従来の日本史の授業に危機感を抱いた村上育朗先生がたどり着いたのが、板書をほとんどしない授業だった。実際にどのように授業を展開するのか、そこで養われる「考える力」とは何かをレポートする。

考える力を養うための板書をしない授業

 「どんな時代や状況も『語り』だけで時代を描き出せる、落語家が話すように授業を進めていくのが、私の理想です」と、岩手県立大船渡高校の村上育朗先生は話す。
 村上先生は、担当する日本史の授業を、「語り」を中心に進める。話の内容は教科書をなぞったものではなく、板書はほとんどしない。生徒には予習として教科書を読ませ、5分程度でできる穴埋め問題のプリントを課している。生徒は、ノートの見開き左ページにこの予習プリントを貼り、授業中は右ページに先生の話の中で自分が大切だと思ったことを書き込む。授業中、生徒はときおりノートに視線を落とすものの、終始、顔を上げて先生の話を集中して聞いている。
 これが、村上先生が約10年間続けている授業スタイルである。かつては、板書をいかに構成するかを工夫していた時期があった、と村上先生は言う。しかしあるとき、ノートに書き付けている内容がクラス全員ともほぼ同じであることに疑問を抱いたという。
 「板書では、教師が色を分けたり四角で囲んだりして、あらかじめ重要なポイントを示しています。生徒はこれをノートに写したことで満足して、自分で考えなくなってしまうのではないかと思ったのです」
 そこで、生徒に考えさせ、気づかせるために、板書をせず、語ることを中心に問いかける授業をするようになったのだ。

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