未来をつくる大学の研究室 発達心理学
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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研究内容
幼児の発達段階を実験で明らかにする

―研究内容を教えてください。

大宮 子どもの論理的な思考の発達について研究しています。現在は、幼児を被験者として、「もし~ならば~だ」といった条件推論と呼ばれる文章を、どの程度使いこなせるかを調べています。例えば、「金魚ならば水に棲んでいます。では、水に棲んでいるから金魚なのでしょうか」と問うと、論理を理解している子どもは「金魚もそうだけど、亀も水に棲んでいるよ」などと答えてきます。その結果から、年齢が上がるにつれ、どれくらい正しく理解する子どもが増えるかをまとめています。

石田 私は、子どもがどのように「カテゴリー」を獲得していくのかを調べています。例えば、動物の絵を渡して任意のカテゴリーに分けさせて、分けた理由を聞きます。そうした実験を通して、次第に複雑なカテゴリーを使えるようになる過程などを浮かび上がらせようとしています。


―この学問の面白いところは?

大宮 一つの研究を進めていると、必ずといっていいほど、そこから新たな疑問が生じ、次の研究テーマが頭に浮かびます。研究を終えても、ホッとする時間はありませんが、好奇心は尽きませんね。

石田 子どもの反応を見るのがとにかく楽しい。実験前の予想と異なる反応をする子どもも多く、一人ひとりの個性や、発達の道筋が一つではないことを改めて学んでいます。研究対象が広いため、自分の興味を研究に結び付けやすいことにも面白さを感じます。恋愛に関する心理学を研究している学生もいます。

高校生へのメッセージ
人間に対する興味が発達心理学への第一歩

大宮 学習内容の一部だけを聞いて進学を決めては後悔しかねません。例えば、心理学には、認知心理学、臨床心理学、社会心理学など、さまざまな領域があるので、下調べをお勧めします。「発達心理学を勉強すると、人の心が読めるようになるの?」とよく聞かれますが、そういう能力は身につかないと思います。ただ、人の心はどう動くかという仕組みは研究の対象になります。

石田 実験も調査も観察も、1人で進められる範囲は限られています。研究ではある程度のコミュニケーションスキルが不可欠です。高校生の段階で、「発達心理学のこの分野を学びたい」という明確な目的を持っている人は稀だと思います。ただ、漠然とでも人間や心について知りたい気持ちがあれば、興味に合うテーマが見つかるでしょう。


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