教師の異動が多い公立高校にとって、ノウハウの蓄積は継続的に実績を上げる上で欠かせない視点だ。しかし、ノウハウを引き継ぐことなく、学年を引っ張ってきたベテラン教師が、一斉に転出してしまったら…。
数年前、秋田県立能代高校が直面した課題はまさにそれだった。同校は、ベテラン教師がそれぞれの持ち味を生かして学年を引っ張り、成果を上げてきた。ところが、2000年ごろからベテラン教師の異動が相次ぎ、赴任してきた教師は初任者研修を終えた若手ばかりという状態が続いたのだ。
若手教師が増えると共に、職員室の雰囲気は大きく変わった。進路指導主事の藤原孝一先生は次のように振り返る。
「ベテラン教師が多いときは、何か行うときでもすぐに意図をくみ取ってくれて、迅速に対応することができました。しかし、若手教師が増えてからは、私たちの思いが正確に伝わらず、もどかしさを感じることも少なくありませんでした」
その結果、学校全体の活気がなくなっていった。例えば、外部関係者が訪問すると、以前なら何人もの教師が積極的に情報を得ようとしていたが、そうした教師も段々少なくなっていった。「能代高校には停滞感を感じる」と漏らした外部関係者もいたという。
同校の「停滞感」は、進学実績にも表れた。例年100名以上輩出した国公立大合格者が、02年以降には100名を下回るようになったのだ。
「進学実績が停滞した原因の一つは、ベテラン教師のノウハウが蓄積されないまま、教師の転出入が繰り返されたことです。ベテラン教師が多かった時代は、教師個々の力で一定の成果を上げることができました。しかし、若手教師が増えて個々の力に頼ることができない以上、学校全体の組織力を生かした指導を目指す必要がありました」(藤原先生)
学校の組織力を向上させ、低迷する進学実績を向上させること。これが、能代高校に与えられた課題となっていたのである。 |