指導変革の軌跡 秋田県立能代高校「進路指導」
秋田県立能代高校

秋田県立能代高校

2007年に創立82周年を迎えた伝統校。「至誠力行」を校訓に、「文武両道」を校是として、高い目標に向けて自ら学ぶ生徒の育成を目指す。硬式野球部は甲子園出場経験もある県内屈指の強豪。軟式野球部、水泳部の活躍も知られる。

設立●1925(大正14)

形態●全日制/普通科・理数科/共学

生徒数(1学年)●約230名

07年度進路実績●国公立大は、東京大、一橋大、京都大、東北大、筑波大、千葉大、弘前大、秋田大、秋田県立大など121名が合格。私立大には、青山学院大、中央大、明治大、早稲田大など延べ244名が合格。

住所●秋田県能代市字高塙2-1

TEL●0185-54-2230

WEB PAGE●http://www.akita-c.
ed.jp/‾sch11110/


井上高廣

▲秋田県立能代高校校長

井上高廣

Inoue Takahiro

教職歴37年目。同校に赴任して2年目。「常に夢と志を持ち続けられる生徒を育てていきたい」

青柳市雄

▲秋田県立能代高校教頭

青柳市雄

Aoyagi Ichio

教職歴30年目。同校に赴任して1年目。「向上心を持って、自分を高めていける生徒を育てていきたい」

三浦政博

▲秋田県立能代高校

三浦政博

Miura Masahiro

教職歴23年目。同校に赴任して3年目。3学年主任。「『私に徹して私を超える』の精神を生徒に伝えていきたい」

黒坂孝

▲秋田県立能代高校

黒坂孝

Kurosaka Takashi

教職歴23年目。同校に赴任して2年目。進路指導部副部長。「生徒をさまざまな角度から支援できる体制をつくりたい」

藤原孝一

▲秋田県立能代高校

藤原孝一

Fujiwara Koichi

教職歴17年目。同校に赴任して11年目。進路指導主事。「生徒が本校を卒業して良かったと思える学校にしたい」

柏谷浩樹

▲秋田県立能代高校

柏谷浩樹

Kashiwaya Hiroki

教職歴11年目。同校に赴任して4年目。3学年担任。「1日1歩ずつ進歩していける生徒を育てていきたい」


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指導変革の軌跡93


秋田県立能代高校「進路指導」

組織力強化で生徒の進路意識を涵養し、進学実績が復活

● 実践のポイント
学年を超えて情報を共有できるように、教科部会を充実させる
「難関大プロジェクト」や「難関大ガイダンス」により、生徒の難関大受験に対する意識を高める
「Will Project」により、学習、進路、指導体制を改革

ベテラン教師の転出で進学実績が低迷

 教師の異動が多い公立高校にとって、ノウハウの蓄積は継続的に実績を上げる上で欠かせない視点だ。しかし、ノウハウを引き継ぐことなく、学年を引っ張ってきたベテラン教師が、一斉に転出してしまったら…。
 数年前、秋田県立能代高校が直面した課題はまさにそれだった。同校は、ベテラン教師がそれぞれの持ち味を生かして学年を引っ張り、成果を上げてきた。ところが、2000年ごろからベテラン教師の異動が相次ぎ、赴任してきた教師は初任者研修を終えた若手ばかりという状態が続いたのだ。
 若手教師が増えると共に、職員室の雰囲気は大きく変わった。進路指導主事の藤原孝一先生は次のように振り返る。
 「ベテラン教師が多いときは、何か行うときでもすぐに意図をくみ取ってくれて、迅速に対応することができました。しかし、若手教師が増えてからは、私たちの思いが正確に伝わらず、もどかしさを感じることも少なくありませんでした」
 その結果、学校全体の活気がなくなっていった。例えば、外部関係者が訪問すると、以前なら何人もの教師が積極的に情報を得ようとしていたが、そうした教師も段々少なくなっていった。「能代高校には停滞感を感じる」と漏らした外部関係者もいたという。
 同校の「停滞感」は、進学実績にも表れた。例年100名以上輩出した国公立大合格者が、02年以降には100名を下回るようになったのだ。
 「進学実績が停滞した原因の一つは、ベテラン教師のノウハウが蓄積されないまま、教師の転出入が繰り返されたことです。ベテラン教師が多かった時代は、教師個々の力で一定の成果を上げることができました。しかし、若手教師が増えて個々の力に頼ることができない以上、学校全体の組織力を生かした指導を目指す必要がありました」(藤原先生)
 学校の組織力を向上させ、低迷する進学実績を向上させること。これが、能代高校に与えられた課題となっていたのである。

教科部会を充実させ学年間で意思疎通を図る

 同校がまず着手したのが、学年横断で設置されている教科部会のてこ入れだった。教科部会では必要に応じて情報交換や教科研究を行ってきたが、実施日が不定期だったためにいつしか形骸化し、年間5、6回しか実施しない教科もあった。それを、05年度からは週1回実施と決め、学年間・教師間で情報交換を密に行うようにした。3学年担任の柏谷浩樹先生は、次のように述べる。
 「以前は、学年別に指導方針を立てていましたが、今は学年間で情報交換を密にして、前年度の生徒の状況を聞きながら新年度の対策を立て、指導方法や教材選定などのノウハウも引き継ぐようにしています。その結果、取り組みが精緻されてきています」
 教科によっては、時期ごとに必要な事項を整理してシラバスを作成した。時期に応じて何を行うべきかを明確にすることで、指導の標準化を図るのが狙いだ。「大切なことは、『自分の学年ではどうするのか』ではなく、『能代高校の国語をどうするのか』という視点に立って考えることです。他学年の課題に対しても、担当学年のことを考えるのと同じように、悩んだりアドバイスをしたりする雰囲気が出てきています」と柏谷先生は話す。


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