指導変革の軌跡 秋田県立能代高校「進路指導」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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「志」を高める新たな改革「Will Project」

 07年3月、同校の職員室は喜びにわいた。国公立大合格者が2年連続で100名を超え(図2)、初めて、東京大、京都大、一橋大の合格者が同時に輩出したのだ。
 職員室はかつての活気を取り戻した。「教師同士で何でも言い合える雰囲気が戻ってきました。若手教師が改革を通して経験を積み、実績を出したことで自信を深めているからでしょう。かつては、若さの悪い部分が全面に出ていましたが、今はそれが逆にエネルギーとなり、学校を引っ張ってくれています」と、藤原先生は話す。

図2

 07年度、同校は更なる飛躍を目指し、新たな改革に着手した。その名も「Will Project」。「Will」は「志」の意だ。それまではどちらかといえば量を増やす指導が多かったが、新しいプロジェクトでは意識啓発に重点を置いている。井上高廣校長は、その狙いを次のように話す。
 「以前、医師志望の生徒と話していたときに、生徒からはどうしても医師になりたいという意思が伝わってきませんでした。社会も自分自身のこともよくわからないまま、イメージだけで進路を考えているのです。将来、各界の第一線で活躍できる人材を育てるのが本校の使命です。単に難関大を目指すのではなく、なぜ大学に入るのかという目標をしっかり持たせることが大切です。これまでの改革を見直して、組織体制や指導方法を確立する必要があると考えました」
 1年次で行う社会人講話を年1回程度から年5回に増やし、2年次では生徒全員にインターンシップを課すことにしたのも、より明確な進路意識を養うためだ。学習面でも、従来行ってきた朝学習と小論文指導・面接指導を関連付けるなど、新たな取り組みを始めた。年度末には、これらの取り組みを総括し、進路シラバスとして体系化を図る予定だ。
 教師の指導力向上の対策としては、年1回、すべての教師が研究授業を行う。「何か一つを変えただけで、学校が大きく変わるということはありません。学習面から進路指導、校内体制までのすべてを見直し、さまざまなことに挑戦することが、学校を変える原動力になるのではないでしょうか」と、井上校長は述べる。
 今後の課題は、指導体制を構築・定着させ、形骸化させることなく次の時代へと引き継いでいくことだ。プロジェクトリーダーの青柳市雄教頭は次のように語る。
 「本校にはまだまだ伸びる余地があると思っています。若手教師に活気が出てきた今こそ、一つひとつの取り組みを着実に実行し、効果を検証しながら積み上げていく。それにより、恒常的に実績を上げられる強固な指導体制を構築していきたいと思っています」


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