ただ、『幸せ』とは抽象的な概念であり、単純に答えを出せるものではない。「幸せは一生かけて追い求めていくものであり、幸せの定義も一人ひとり異なるはず。大切なのは、学校での学びや体験を通して幸せになるための力を身につけさせ、幸せを追い求め続ける姿勢を身につけさせること」と青山教頭は強調する。こうした同校の方針を具現化している取り組みが、国語の授業における論理力の養成と、「総合的な学習の時間」で行う哲学の授業だ。
「幸せになるために、人は考えなければなりません。しかも、漠然とではなく、論理的に考えてこそ、思索を深めることができます。単に『幸せについて考えなさい』と言うだけでなく、どのように考えればよいのか、その方法をしっかり教える必要があると考えました」(青山教頭)
同校が導入したのが「論理エンジン」だ。これは、予備校講師の出口汪(ひろし)氏が開発したプログラムで、あらゆる思考の基礎となる論理力・国語力・言語能力を鍛える教材である。これをサブテキストとして、1、2年生を中心に学期に1回、国語の授業の2、3コマを使って論理力養成に取り組む。サブテキストのレベルは1から100まであり、問題を解くことで、段階を追って論理力が身につく仕組みになっている。中学入試相当の51~60レベルを最低限のスキルとして身につけさせる。
ここで身につけた力を実際に活用する場が、哲学の授業だ。『14歳からの哲学』(池田晶子著/トランスビュー)をテキストとして、3年間かけて「自分とはだれか」「理想と現実」「仕事と生活」「品格と名誉」などのテーマに挑む。「考える力はあくまでも手段。それを基に具体的なテーマについて考察を深めることが大切です。『幸せとは何か』という結論が見いだせなくても、毎日の生活を見直すきっかけになってくれればよいと思います」と、青山教頭は話す。 |