特集 組織の中で伸ばす教科指導力

工藤文三

▲工藤文三

Kudo Bunzo
国立教育政策研究所 初等中等教育研究部長

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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COLUMN

国立教育政策研究所 初等中等教育研究部長 工藤文三

新学習指導要領は「活用力」重視の教科指導にシフト

「生きる力」の定義を再構築

 先ごろ、新学習指導要領の概要が固まりました(2007年12月現在)。小学校・中学校の学習指導要領は、2007年度中に告示が予定されています。高校の学習指導要領の告示は、それ以降となるでしょう。
 現行の学習指導要領の「生きる力」は継承されますが、新しい意味を加えて再構成されています。それを象徴的に表すキーワードは「知識基盤社会」です。「課題を見いだし解決する力」「生涯に渡って学習する力」などが必要とされる「知識基盤社会」を担うための力として、「生きる力」が改めて強調されています。OECDが定義する「キー・コンピテンシー(主要能力)」に符合するものとして「生きる力」を位置づけた点も、今日的な課題に対応していこうとしている姿勢が表れています。
 この「生きる力」を明確にするため、今回の改訂では教育基本法や学校教育法の改正の下で教育目標、義務教育の目標が定められました。この中で、学力の重要な3要素を次のように規定しています。
(1)基礎的・基本的な知識・技能の習得
(2)知識・技能を活用し課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力
(3)学習意欲

 これまで、このような具体的な文言を法律に明記することはありませんでした。通常、法律では、学校の定義や校内の職制などの基本的な仕組みを定義します。学力の内容を定めたことは、これらの学力に普遍的な意味を持たせたことになります。

「活用」を重視した新科目の設置

 新学習指導要領の内容を見る際は、このような学力観・学習指導観を踏まえて教科・科目が改訂されていることを念頭に置く必要があります。その上で、各教科で求められている指導の在り方や身につけさせたい力を再確認することが大切です。
 教科ごとに改訂内容を見ていくと、その特徴は(2)で挙げた「知識・技能の活用」を具現化している点にあるといえます。
 国語では「国語総合」を必修科目とし、「話す・聞く・書く・読む」の学習を総合的に行い、実社会で活用できる国語能力の育成を目指します。
 数学は科目構成が改められます。新設される「数学活用」は、実生活における数学の役割などを理解させながら、具体的な事象への活用を通して活用力を高めることを狙いとしています。例えば、微分・積分の応用例を挙げるなど、教師には、単に概念や定理を教えるだけではなく、日常生活における意味・活用法にまで広げていく力量が求められます。
 理科では、例えば粒子やエネルギーであれば、その基本概念を明確にして小中高の系統的・体系的な指導に結び付け、最終的に新設科目の「課題研究」で行う探究活動へとつなげるようになっています。
 英語は、「話す・聞く・書く・読む」の4技能の統合を図り、よりコミュニケーションを重視した指導へとシフトします。科目構成が改められ、「コミュニケーション英語Ⅰ」は必履修とされます。
 教科書も、より「活用」を重視した内容に変わると思われます。先生方がつくる教材や授業の進め方にも創意工夫が求められるでしょう。


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