ただし、生徒が将来に対する夢を抱いたり、展望を描くようになったりするきっかけは、何も進路指導課主導の行事や活動だけとは限らない。中村長嗣校長は、「教育活動全体を通して、社会性の育成や進路意識の高揚を図っていきたい」と話す。
その一つが、「書く」指導の重視である。同校ではインターンシップや上級学校訪問等の活動後のレポートはもとより、講演会や文化教室の感想文、あるいは授業での小論文など、あらゆる機会を見つけて生徒たちに文章を書かせている。
「今の生徒がなかなか自分の進路を決められないのは、社会のことをよく知らないのが大きな原因だと思います。その点、書く際には書く対象を見つめて、更に対象と自分とのかかわりについて深く考える作業が必要となります。書くこと自体が、社会と自己との関係に目を開くきっかけになるのではないかと考えているのです」(中村校長)
同校では、生徒の資格取得や各種コンクールへの参加にも力を注いでいる。資格を取得することで自信をつけた生徒が、その資格を生かして大学進学を真剣に考えるようになる。あるいはコンクールや大会に参加した生徒が、大会後は見違えるような顔つきになる。
「07年には全国高校ロボット競技大会に本校から2チームが参加し、目標である初戦突破を果たしました。またソーラーカーレースにも参加して、鈴鹿サーキットを走りました。
就職試験にせよ、大学の推薦入試にせよ、面接では『あなたは高校時代に何をやってきたのか。うちで何がしたいのか』ということが問われますが、こうした活動を経験してきた生徒は、自分の体験や将来の展望を明確に語ることができます。生徒が普段行っているさまざまな活動が、すべて進路指導に結び付くのです」(中村校長) 七尾東雲高校は、開校4年目のまだ若い学校である。菅先生をはじめとした進路指導課の教師が、ゼロから進路指導の形を整えてきた。だが今年同校に赴任してきた福島則明教頭の目には、「タイムリーな時期に、生徒の実態に合った行事や活動が組み込まれている。既に完成度は高い」と映ったという。
「これから必要となるのは、進路指導課のこの活動を、学校全体に根づかせていくことだと思います。今の段階ではまだ進路指導課主導の実践になっていて、一人ひとりの先生が活動の意図を理解しているとはいえません。すべての先生が主体的に生徒の進路実現や進路意識の向上に取り組めるようになったとき、その活動は『東雲ストーリー』という学校文化にまで高められると思います。それが次に私たちが目指すべきステップですね」(福島教頭) |