私を育てたあの時代、あの出会い

しばた・ひろし

しばた・ひろし

英語科。松江北高校には10年間勤務。進路指導部長などを務め、同校の進路指導の中心的役割を担う。在任9、10年目、同校は全国の公立高校で最多となる国公立大合格者を送り出す。05年度より益田高校校長を務める。

かわしま・ひろあき

かわしま・ひろあき

松江北高校校長をはじめ、島根県内の高校の校長、教頭、進路指導部長、東出雲町教育委員会教育長などを歴任。島根県の教育改革の主導的役割を果たす。07年より東出雲町長。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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私を育てたあの時代、あの出会い

志がかけがえのない出会いを生み 時を濃密にした

島根県立益田高校校長◎柴田博

学校の歴史は、出会いと別れによってつくられる。
だが邂逅(かいこう)のときは志を持った者だけに訪れる…。
旧制中学以来の歴史を誇る全国有数の進学校であり、カリキュラムや学校組織の改革に先駆的に取り組んできた島根県立松江北高校で進路指導部長などを歴任し、現在は島根県立益田高校校長を務める柴田博先生に、教師としての出会いと成長についてうかがった。

 私が松江北高校に赴任したのは42歳のときでした。それまでの経験から、これからの高校には進学指導についての確かな見識とそれを具体化する方法論、更に教師全員を巻き込む学校の組織化と教育活動の整備が必要であると感じていた私は、全国屈指の進学実績を誇る同校でそれを学べると期待していました。
 当時同校は、担任が互いに対抗意識を抱く群雄割拠の時代からの脱却を図っていました。その変革の中心にいたのが当時の進路指導部長の鞁嶋(かわしま)先生でした。「個人技では限界がある。みんなで知恵と力を出し合って臨まなければ課題は解決しない」と、的確な場面を捉えて発言される。すると、経験豊富で優れた指導力を持つ教師たちが一斉に顔を上げて耳を傾ける。「人を動かす」とは、課題から目をそらさず、それを皆で解決していこうと訴えることから始まると、改めて感じました。
 もっともそれには、課題を「課題」として捉える視点と発想の共有が不可欠です。私たちの指導が個人プレーで終わるか、組織として機能し成果を出せるかはまさにそこにかかっています。その部分できちんとした指摘と説明がなされるからこそ、ひとかどの見識も信念も持つ教師がまとまっていく。その過程を体験できたことは貴重でした。
 私たちの指導は3年間で終わるのではなく、 生徒のその後の人間形成の過程を見通したものでなければならないと当時から意識していました。彼らがどのようにして進路目標を選択し、実現していくかは、彼らの未来の生き方に大きな影響を与えるからです。そのように考えると、自分のクラスさえ良ければとか、今年の入試結果さえ良ければという指導は価値を持ちません。更に、地域や時代の中で本校が果たすべき役割を見据えた指導ができなければ、学校そのものが衰退する。確かな教育力のない地域は栄えない。そういう大きな視点も、松江北高校で学びました。

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