中国には古来より「薬食同源」(※1)という言葉があります。バランスの取れた食事をとれば病気にはならないし、病気になったときは食を正すことが第一の治療となる。それでも治らない場合は、薬草、今でいう漢方薬を使うという発想です。
私たちの研究は、この「薬食同源」の考え方を共通認識として、健康を保つための食品の活用や、食品と医薬品を組み合わせて新しい薬をつくり出すことなどを目的としています。
薬の開発には莫大なコストがかかります。新薬をつくるためには100~200億円、期間は10~15年かかるというのが一般的です。しかも、一つの薬をつくるために、何千、何万種類もの化学物質を検討しなければなりません。医薬品の多くは人体にとって異物ですから、副作用などのマイナス面もあります。
ところが、食品は元々人間が食べてきたものです。抗酸化性、抗発がん性など、病気に対して有効な成分が含まれているものも多くあります。そこで、私たちの大学には食品栄養科学部と薬学部があるという利点を生かし、従来からある薬と食品を組み合わせて、より使いやすく、より低コストな医薬品をつくろうとしています。
研究で気をつけているのは、地元・静岡県の特産物を生かすことです。気候風土に恵まれた静岡県は海の幸、山の幸が豊富で、生産高日本一のお茶やワサビ、ネーブルオレンジをはじめ、生産高トップ10に入る産物が78品目もあります。そのメリットを生かし、地元の産物を研究に活用しています。ワサビの葉やサクラエビのヒゲなど、今まで廃棄されていた部分の有効な活用法を見つけ、環境問題にも貢献したいと考えています。 |