VIEW'S REPORT 生徒指導
權 五良

ソウル大学校
權 五良 教授

Oryang Kwon

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 4/4 前ページ 

教育を変えるために
必要なこと

小学校英語がもたらしたもの

 韓国の小学校で、英語が正規の教科として導入されたのは1997年のことです。韓国では81年から特別活動の一環として、小学校で英語活動が行われていたため、正式導入のときにも、それほど大きな混乱はありませんでした。
 小学校の英語教育は3年生から始まりますが、内容はスピーキングなど音声教育が中心です。教科書もイラストを多用し、音声や映像を使いながら、歌やリズム遊びなど英語を楽しむ活動が中心です。
 小学校英語の必修化は、中高における英語教育にも変化をもたらしました。中学で音声言語やコミュニケーション能力を重視する授業が行われるようになり、その分、文法の指導は減りました。語彙の面では、小3~6年生の間に計500語を習得させることになっています。高校卒業までに覚えなければならない単語数は変わっていないため、中高の指導内容が充実しました。

社会全体が英語の重要性を認識

 教育を変えるためには、教育課程、教科書、教員養成システム、入試、指導方法のどれか1つを変えるだけでは意味がありません。すべてが連携して、同時に変わっていくことが大切です。
 韓国ではまず、教育課程を変えました。これにより教科書が変わり、教員養成システムも変化しました。今は入試も変わっています。かつて、韓国の入試では文法が中心でした。しかし、93年に修能試験が導入されてからは、発音やアクセントを筆記試験で問う問題は姿を消し、主題や筆者の感情、態度などを読み取る試験内容に変わっています。また、リスニングが導入されたことで、ここ数年、高校生のリスニング力は大きく向上しています。現在は50問中17問が充てられていますが、将来は25問まで増やす予定です。
 入試の変化に応じて、高校の指導にも変化が表れています。高校教師のアンケートによると、3分の2くらいの教師が修能試験の変化に応じて、教え方やテストの方法を変えていると答えています。
 社会全体の認識も大きく変わりました。早期留学や語学研修を受ける学生が増え、大企業の入社試験では、スピーキングテストが課されるようになりました。教育政策だけではなく、社会全体で英語が大切であるという認識を共有していることも、教育を変える大きな原動力であり、それが今日の韓国の英語教育を支えているのです。


  PAGE 4/4 前ページ