特集 つなぐ教師の教科指導力
 
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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補習で学習量を増やしても成績は伸びない

 私が物理の本質を理解させることの大切さに気づいたのは、40代半ばでした。難しい演習問題を解かせても補習で学習量を増やしても、思うように模試の成績が伸びない。教科書だけで本当に生徒の力は伸びるのかと考え、授業で試行錯誤した結果、思い至ったのです。
 教科書をなぞったり、小手先の演習をさせたりするだけでは、ある程度成績は伸びても、それ以上突き抜けることはできません。教師が手取り足取り教えるのではなく、物理現象の本質に気づかせ、物理に対する関心を高めることで、生徒が自律的に学びに向かうよう促していくことが大切なのです。
 また、授業では、今、学んでいる単元が社会の中でどのような役割を担っているのか、卒業生は高校時代に学んだ物理の知識をどのように生かしているのかを、折に触れて話しています。物理と社会との接点や、将来の自分自身の姿を思い描かせることで、物理に対するモチベーションを高めていくのです。
 物理に限らず、指導の効果を左右するのは、生徒と教師との信頼関係です。いくら熱弁を振るったとしても、教師の本気が伝わらなければ、虚飾の部分を見透かされて、生徒は決してついてはきません。日常生活も含めて、常に生徒と本気で向き合う姿勢が、真の指導力につながると思います。
 規模の小さい学校では、校内に同一科目の教師が1人しかいないことも多いと思います。指導力を高めていくためには、学校の外に目を向け、手本となる先生を見つけることが不可欠です。
次号予告 12月1日発行予定
つなぐ教師の教科指導力 後編

教師個々の教科指導力は、どのようにしてつなぎ、高めることができるのだろうか。
具体的な事例を基に考える。

視点1:校内でつなぐ
・授業を見せ合うことで、指導力を高める
・模試などの分析・評価を共有し、指導力を高める

視点2:校外でつなぐ
・行政主導の研修を活用して指導力を高める
・学校間での共通の問題意識から生まれた研究会を通して、指導力を高める

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