特集 つなぐ教師の教科指導力
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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物理現象の本質に授業でいかに迫れるか

 これまで多くの教師の授業を見てきた経験から感じるのは、授業が教師の独演になっている場合が多いことです。特に進学校では、大半の生徒が基礎・基本を身に付けているため、授業が進めやすい。生徒が黙って聞いているので、理解していると思い込み、通り一遍の説明や板書で済ませたり、難解な説明を押し付けたりしてしまうのです。
 また、問題の量をこなすことで学力が高められると考えている教師も多くいると思います。知識を習得することは大切ですが、今はインターネットや電子辞書などで簡単に調べられます。本当に必要なのは、知識そのものを身に付けることよりも、知識を活用し分析する力ではないでしょうか。
 物理を指導する上で重要なのは「基礎・基本の概念を形成すること」にあると考えます。そのためには、「考え方のストーリー」を重視していくことです。この過程で身に付けられる論理的思考力や直観力、洞察力は、文系・理系を問わずあらゆる職業に必要です。それを体得させることこそが、物理教育の使命なのではないでしょうか。
 そのために大切なのは、いかに授業の中で物理現象の本質に迫れるかということです。なぜその現象が起こるのか、自然界でどのような意味を持つのか、現象の本質まで掘り下げて生徒に理解させることが重要です。
 例えば、運動方程式のma=FのFは単に「力」と書かれているときがありますが、正確には、外からその物体に対して働く複数の力を一つにまとめた「合力」のことです。私は生徒がそのことを理解するまで2、3時間はかけて説明しています。
 基礎・基本に時間をかけすぎたために、演習時間が不足したり、より難解な事項を説明できなかったりすることもあります。しかし、基礎・基本をなおざりにして先に進んだとしても、深い理解には到達できません。基礎・基本さえきちんと押さえておけば、応用的な事項も理解できるようになりますし、物理現象の本質に気づいた生徒ほど主体的に学習に取り組むようになるのです。物理が得意な生徒も苦手な生徒も、それは同じです。

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