10代のための「学び」考

松尾浩也

松尾浩也

まつお・こうや
1928年熊本県生まれ。東京大法学部法律学科卒業。東京大法学部教授、千葉大法経学部教授、上智大法学部教授等を歴任。94年紫綬褒章、00年勲二等旭日重光章受章。現在、東京大名誉教授、日本学士員会員、検察官適格審査会会長。法務省特別顧問として、法制審議会の刑事立法活動に参画。主な著書に『刑事訴訟法〔上〕・〔下〕』(弘文堂)、など多数。

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10代のための「学び」考

松尾浩也

東京大名誉教授 日本学士院会員
新たな理論の創造に大切なのは
じっくり研究対象に取り組むこと

 2009年5月からいよいよ実施される「裁判員制度」の名付け親であり、東京大法学部部長や法務省の法制審議会会長を歴任し、刑事訴訟法の権威として知られる松尾浩也東京大名誉教授。現在も法務省の特別顧問として立法活動に尽力している松尾教授に、研究の原点と学問の魅力をうかがった。

読書で知った、新しい世界に触れる喜び

 小学校時代の私の最大の楽しみは、本を読むことでした。学校から帰ると毎日父の書斎にもぐり込み、吉川英治、佐々木邦、江戸川乱歩などを片っ端から読みました。読書によって自分の知らない世界が見えてくることに、大きな喜びを感じたのです。「刑事訴訟」に最初に触れたのも本の中でした。実在の殺人事件をモデルにして調書や裁判の様子を盛り込んだ『支倉(はせくら)事件』(甲賀三郎著)や海の上で酷使される労働者の姿を描いた『蟹工船』(小林多喜二著)で、被告人を追及する過酷な様子などに触れ、子ども心にも刑事手続の厳しさ、切なさを感じたことを覚えています。


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