小学校時代の私の最大の楽しみは、本を読むことでした。学校から帰ると毎日父の書斎にもぐり込み、吉川英治、佐々木邦、江戸川乱歩などを片っ端から読みました。読書によって自分の知らない世界が見えてくることに、大きな喜びを感じたのです。「刑事訴訟」に最初に触れたのも本の中でした。実在の殺人事件をモデルにして調書や裁判の様子を盛り込んだ『支倉(はせくら)事件』(甲賀三郎著)や海の上で酷使される労働者の姿を描いた『蟹工船』(小林多喜二著)で、被告人を追及する過酷な様子などに触れ、子ども心にも刑事手続の厳しさ、切なさを感じたことを覚えています。
|