教師の思いは、生徒に確実に伝わっている。08年春に卒業したある生徒は、「油木高校でも頑張れば国立大に合格できることを証明したかった」と、後輩に語った。「頑張ること、合格することは、自分の希望をかなえることでもあるけれど、後輩に夢を与えることにもなる」と話す卒業生もいた。
08年度3年生の4月時点での大学進学希望者は35%だったが、7月の進路希望調査では52%に増えた。進路指導部長の竹下弘行先生は、「入学時点で大学進学を意識していなかった生徒も、先輩の姿に刺激を受けて、大学も一つの選択肢だと確実に意識するようになりました」と喜ぶ。
進路指導部の猪原健二先生は、大学のオープンキャンパスに専門学校や就職希望者も参加させた。
「本校の進路希望は大学、専門学校、就職が3分の1ずつです。ただ、専門学校や就職希望でも、よく考えずに決めている場合が見受けられました。生徒があまりにも狭い視野で進路を考えているため、生徒全員に大学進学という選択肢を投げかけてみました。今後は、生徒一人ひとりと向き合い、進路を一緒に考えていきます」
08年春の卒業式後、大学に合格した2人の生徒が毎日、だれに言われるでもなく校内の床をワックスがけしにやって来た。それを目にした内田先生は、「受験勉強を通して、生徒たちの間に確実に感謝する気持ちや人間的な深まりが生まれる」と改めて感じたという。
「自分たちと真剣に向き合ってくれた先生を、生徒は信頼してくれたのだと思います。本校は小規模校ですが、教師全員が生徒全員を知っている強みがあります。そのよさを生かし、できることは最大限していきたい。今後、町内の中学生数が減少していくことを考えると、今年が勝負の年です」(藤本校長)
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