特集 つなぐ教師の教科指導力
野口敏朗

東京都教職員研修センター 研修部授業力向上課課長

野口敏朗

Noguchi Toshiro

針谷玲子

東京都教職員研修センター 研修部授業力向上課統括指導主事

針谷玲子

Harigai Reiko

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【視点2】校外でつなぐ:東京教師道場

道場を拠点にキャリア・地域・校種を超えて
教師がつながる

東京都は、2006年に「東京教師道場」を開いた。
公立の小・中学校、高校での指導的役割を担うべき若手教師の育成を目的とした研修の場である。
現場の中堅・ベテラン教師を助言者とし、リーダーとしての資質も伸ばす。
小中高の教師を交えた研修も行い、それぞれの良さを取り入れながら指導力向上を図る。

授業研究を中心に実践的な力を養成

 「東京教師道場」(以下、道場)は、東京都教職員研修センター(以下、研修センター)が主催する、公立の小・中学校、高校、特別支援学校の若手教師を対象とした研修システムだ。2年間の継続的な授業研究を通して、中堅・ベテラン教師から指導や助言を受け、教科の専門性を高めると同時に、身に付けた指導技術を学校や地域に還元することがねらい。東京都教育委員会が2004年度に立ち上げた「東京都公立学校の『授業力向上』に関する検討委員会」が、新たな研修制度として検討し、06年4月に発足した。
 道場は、研修を受ける「部員」と、指導する「助言者」によって構成される。部員は概ね経験5~10年の若手教師で、教科に関する高い専門性を身に付けたい教師、各校長が授業力向上のためのリーダーとして育成したいと考える教師らだ。助言者は40代半ばの中堅が多く、学校現場で若手教師育成の指導的役割を果たしている教師である。募集人員は部員400人、助言者100人で、いずれも校長の推薦を受けて道場に派遣される。
 研修の基本単位は、同じ校種・教科の部員4人に対して助言者1人。これを1グループとして、2年間継続的に授業研究や協議・演習を行う。更に、複数のグループを元校長である学習指導専門員(教授)が統括し、適宜アドバイスをする。研修内容は、月1回の授業研究が中心となる(図1)。4人の部員が1人ずつ順番に自分の学校で授業を行い、1人が2年間で3~5回の研究授業を担当する。
 授業研究の最大のポイントは、授業後に部員、助言者間で行う研究協議だ。学校も地域もキャリアも異なる教師が集まるため、最初から率直に意見をぶつけ合うのは難しい。そこで、付箋によって意見を交換している。青い付箋に良かった点、ピンクの付箋に改善すべき点、黄色い付箋に疑問点を記して掲示し、それを基に課題の焦点化や改善策について検討する。研修センター研修部授業力向上課の野口敏朗課長は次のように話す。
 「付箋の活用は、口頭では遠慮しがちな議論を活発化させるだけでなく、課題を整理し、分析する上でも効果的です。部員同士の協議の内容も、1年目は良い点を評価する意見がほとんどですが、2年目には『あなたの授業は生徒には易しすぎる』など、厳しい意見がどんどん出てくるようになります」
 更に、夏季休業中には2日間の集中協議を実施し、授業実践の紹介や指導技術向上のための演習などを行う。あくまで授業を通して、実践的な指導技術の向上を目指すところに、道場のこだわりがある。
図1

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