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他校種との交流・連携で学びが深化
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研究授業や協議・演習の際に、自らの経験に基づいてアドバイスを与えるのが助言者である。実は、助言者自身のスキル向上も、若手教師の育成と並んで道場の重要な役割の一つである。研修センター研修部授業力向上課の針谷(はりがい)玲子統括指導主事は、そのねらいを次のように話す。
「単に自分自身の経験や蓄積してきたノウハウを提示すれば、それが助言になるというものではありません。部員一人ひとりの個性や蓄積を踏まえ、個々の資質に合った言葉をかけることが必要です。若手教師への指導を通して、主任・リーダーとして資質を高めてほしいと考えています。他校の若手教師との研修は、自らの授業を振り返るきっかけにもなるでしょう」
複数のグループを統括する学習指導専門員は、元校長の立場から助言者をフォローする。学校経営計画の中の位置付けや学年運営の観点からのアドバイスは、部員・助言者が将来的に管理職としてキャリアアップを図る際に貴重なものとなる。
道場のもう一つの特徴は、異校種との交流や連携の機会が設けられている点だ。高校の教師が小・中学校の授業を見たり、小・中学校の教師と授業改善について話し合ったりすることで指導の視野を広げると共に、高校のノウハウを他校種にも伝えるのがねらいだ。
例えば、教科書や教材の活用のしかた一つをとっても、異校種の取り組みは参考になる場合が多くある。小学校では、よく教科書をプロジェクターなどを使って拡大して黒板に掲示する。各自が机上の教科書を見るのではなく、黒板の掲示物に注目させることで、子どもの顔を上げさせ、授業により集中させるためだ。
こうした手法は小学校ではごく普通に行われているが、高校教師にとっては新鮮に見える。児童を対象として編み出された工夫の中にも、高校で応用できる技術はいくつもある。
「小学校の先生は、幅広い学力層の児童を前にして、子どもたちの集中力を授業中ずっと途切れさせない技術を持っています。高校の先生で、授業中に生徒の個に応じた指導に目を向ける人は、あまり多くありません。子どもを引き付ける指導技術は、高校の先生にも見習える点が多いのではないでしょうか」と、野口課長は話す。
道場の事業は、今後も継続する計画だ。10年間継続すれば、修了生は5000人を超えるが、東京都には公立の小・中学校、高校と合わせて約6万人の教師がいる。そのため、修了生が勤務校に戻ったときに、道場で学んだ指導技術をいかにまわりの教師に還元できるかがポイントになる。08年度、新たに開講した「東京教師道場錬成講座」は、そのための布石の一つである。道場修了者等を対象に、教科の専門性の更なる向上、教育課程や組織運営に関する知識を伝授することによって、実践的な課題解決力を養う。
地域や校種、キャリアの違いを超えて教師たちがつながる東京教師道場。東京都の教育全体の向上に結び付くどうかは、修了生一人ひとりの熱意と、それを受け入れる学校現場の意識にかかっている。 |
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