特集 つなぐ教師の教科指導力
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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受講者の声

写真 千代田区立九段中等教育学校
高橋省司 Takahashi Shoji
教職歴8年。同校に赴任して2年目。
数学担当。東京教師道場入門は06年4月。
今春より引き続き「錬成講座」で研さんを積んでいる。

大切なのは自分自身の授業に謙虚になること

 教師道場へは第1期生として06年度に入門しました。道場に期待したのは、互いの授業について先生方と交わす白熱の議論です。団塊世代の先生方は、同僚と酒を飲みながら、教育や授業の在り方について論じ合う中で、指導スキルを高めていったと聞きました。意識の高い先生方と切磋琢磨することで、指導力を高めていきたいと考えました。
 入門して何よりも痛感したのは、「評価」を授業改善に生かすという認識が、高校現場では非常に薄いことです。私自身、評価といえば、単に考査の成績や提出物の状況などを加味して、ABC……と付けていくものとばかり考えていました。しかし本来評価とは、目標に対してどれだけ達成できているかを測り、それを次の指導に生かすもの。数学的なものの見方・考え方を養うためにも、関心・意欲・態度や知識・理解など観点別にきちんと目標を立てて評価しなくてはなりません。実際の指導案や模擬授業では、机間指導をしたりワークシートでチェックしたりという方法論に終始してしまい、目標をどうするか、それをどのように次の時間につなげるかというところまで思い至らず、再三、助言者や教授に指導を受けました。
 基本に忠実になることの大切さにも、改めて気づかされました。本来、授業は50分で1つのストーリーと捉え、「導入・展開・まとめ」とめりはりを付けて要点を生徒に印象付けることが大切です。また、生徒の発話を丁寧に受け止めたり、生徒同士の対話を多用したりといったコミュニケーションも欠かせません。自分がいかに工夫なく授業をしていたのかということを思い知らされました。
 授業力を高めるためには、まず自分自身の授業に対して謙虚になることが大切です。自分の教え方はこれでよいのか、時代遅れになっていないか、絶えずアンテナを張って外部の意見を取り入れ、指導改善に生かしていきたいと思います。
写真 東京都立片倉高校
荒木奈美 Araki Nami
教職歴9年。同校に赴任して3年目。
国語担当。
東京教師道場入門は07年4月、修了予定は09年3月。

失敗を重ねることで見えてくるものがある

 私が東京教師道場への入門を決意したのは、本校に赴任して1年目の06年のことです。それまで進学を見据えた指導をした経験がなかった私にとって、大学進学を目指す生徒が多い本校での指導に、いまひとつ自信が持てませんでした。自分の教科指導に自信を持てるようになるために、自ら校長に申し出て道場への入門を希望しました。
 入門したてのころは、「きちんと指導しなければならない」という理想ばかりが強すぎて、道場で学んだことを生かしきれないことが多かったと思います。学校では進学実績向上を目標に掲げてプランを練るのですが、すべて空回り。毎回宿題を出して細かくチェックしたり、無理に放課後の補習を実施したりしましたが、思うような成果を得られずに不満が募るばかりでした。
 スランプを乗り越えるきっかけになったのは、2年目の夏、小・中学校の先生と合同で行った夏季集中研修でした。常に子どもの人間的な成長を第1に考えて指導している先生方の姿から、私は自分が形を整えることばかりに意識を集中しすぎて、目の前の生徒に目を向けていなかったことに気づいたのです。
 そこで、予習・復習をしないことを前提に授業を構成し直し、テスト前に勉強しやすいようなノートづくりの方法を教えるなど、生徒の実態に合わせて指導法を変えました。
 道場に入門して1年半、何よりも私を変えた「気づき」は、ここにあったように思います。大切なのは指導技術そのものではなく、目の前の生徒に何が必要なのかを常に考え続ける姿勢ではないでしょうか。
 もう1つ学んだのは、こうした「気づき」は、だれかに教えられるものではなく、実践の中から体得していくものだということです。これからも多くの実践を通して、目の前の生徒から多くのことを学んでいきたいと思います。

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