今までにない新しいことや、だれにもできなかったようなことをしようとするとき、すぐに成功することはまずなく、必ずと言ってよいほど壁に突き当たります。私が電子線ホログラフィーの開発をしたときも、同様でした。しかし、わたしは悲観しませんでした。むしろ「やっと面白くなってきたな」と思ったものです。なぜなら、その〝原因探し〟や〝謎解き〟こそが、研究の醍醐味だと思うからです。物理は論理的で、絶対に答えが出るもの。なぜ壁にぶつかったのか、その原因さえ突き止められれば、あとは努力次第で必ず解決することができるのです。そして、努力し続ける原動力になるものは、「好奇心」だと思います。アインシュタインは「光に近いスピードで走りながら、光を見たらどうなるのだろう」という疑問を突き詰めた結果、相対性理論をつくり上げました。私も子どものころの水溜まりにできた波紋を見て「奇麗だな」と感じた体験が原点になり、「電子の波があるなら見てみたい」と思い、40年以上研究を続けてきました。
学生時代は目の前の勉強や試験に追われ、子どものころのわくわくした気持ちを忘れてしまいがちです。しかし、是非好奇心を忘れないでいてほしいと思います。その好奇心が、壁を乗り越え自分の目標や夢をかなえる原動力となるのですから。
|