大学はいうまでもなく、社会を支え、未来をつくる人材を送り出す高等教育機関である。大多数の学生が卒業後に企業等へ就職することからも、大学教育では社会に必要とされる人材を育成することが重要である。しかし、日本の大学教育は社会から求められている教育に即していないのではないかと、千葉商科大学サービス創造学部長の吉田優治教授は疑問を呈する。
「今の大学教育は、学問知の育成に偏っていて、実践知の育成があまりなされていません。学者の育成が目的ではなく、大多数の学生が将来、企業社会に出て行く人材である以上、実践知を学べる場をどう提供するのか、大学には工夫が必要なのです」
現在でも、多くの大学では、インターンシップや講師の派遣など、企業との連携によって学生に実践の場が提供されている。しかし、吉田学部長は、それらは単発のイベントに終始し、本当の意味での「産学連携」ができていないと指摘する。
「企業講演会で取締役の話を1回聞いただけで、学生は企業の何を体験したというのでしょう。インターンシップで1週間企業で仕事をしたといっても、所詮はお客様扱いです。企業にとって手間が増えるだけで、学生も企業も何のメリットも感じられていないのが実態なのです」
大学の学問重視の姿勢を象徴する一つが、教員の評価システムだ。大半の大学教員は研究や論文などの学術的業績に基づいて評価されている。大学教育への貢献や実績などについて評価する仕組みが、今の大学にはないと、吉田学部長は憂慮する。
「教育は大学の重要な使命の一つであるにもかかわらず、教員は学問上の実績ばかりが評価されています。そうした姿勢は、教育の質にも影響すると思うのです」
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