教える現場 育てる言葉

三菱重工業下関造船所

三菱重工業下関造船所

みつびしじゅうこうぎょうしものせきぞうせんじょ
フェリーをはじめ、特殊船、軽合金製の高速船などを手掛けるほか、油圧技術を基にした各種油圧機器、試験装置、甲板機械などの製造も手掛ける。最近では、ボーイング787の主翼用ストリンガー(縦通材)を製作している。その技術レベルは世界でもトップクラスといわれる。


シニアエキスパート

村上 寛(中央)

むらかみ・ひろし 1945年生まれ。船ブロック組立技能者。定年後もシニアエキスパートとして活躍。2000年に山口県知事から優秀技能者として表彰される。


総務部総務勤労課・人事担当課長

谷内英夫(右)

やち・ひでお 「技能塾」の創設を含め、技能伝承問題に取り組んでいる人事担当。造船業界が抱える人材不足問題の解決と人材育成の方法を模索中。


技能塾講師

松本告行(左)

まつもと・つぐゆき 船の「血管」ともいえるパイプ部分を担当する、この道35年のベテラン。今年から「技能塾」の講師に。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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教える現場/育てる言葉・Number5


三菱重工業下関造船所

現場レベルの声を生かした“技能伝承”

技能者の育成に大切な長期的視野

1970年代から長い間不況が続いた日本の造船業界。だが、近年になって状況は大きく好転し、その高い技術力が再び注目されている。
そんな中で浮上したのが、造船技術の伝承問題。
オイルショックによる不況時の採用ストップは若手・中堅技能社員の不在、という問題を生じさせた。
技術を受け継ぐ者が消えかけるという危機に直面した造船所の取り組みを取材した。

長引く造船不況が招いた技能伝承の危機

 本州の最西端、山口県下関市。関門海峡に面するこの地は、古くから造船業で栄えてきた。三菱重工業下関造船所も、1914(大正3)年の創業以来、100年近くにわたって、数多くの船舶を世界中の海へ送り出してきた。
 そんな造船所を支えているのが、技能系社員たちだ。造船業が他の多くの製造業と異なる最大の要因は、ほとんどが「受注生産」であること。自動車や家電製品をはじめ、現代の工業製品の多くは大量生産が前提だ。しかし、船舶という特殊かつ大型の乗り物となると、形や大きさ、機能など一隻ずつすべて異なる。現場の技能系社員の熟練した技能や、長年の経験なくしては成り立たない産業だ。だからこそ、一人前の造船技能者になるには、30年かかるともいわれている。
 この造船所は、つい最近まで危機的な状況に見舞われていた。造船業は戦後の日本経済を支えた主要産業の一つだ。しかし、1970年代の2度のオイルショックで造船業界は不況が続き、15年もの間、技術者の社員採用は抑制されていた。
 「この下関造船所でも、現在40代の社員は極端に少ないんです。世間では団塊世代の大量退職による『2007年問題』が話題になっていましたが、我々が直面している問題は、もっとずっと深刻なものでした」。こう語るのは、現在、下関造船所総務部で人事を担当している谷内英夫さん。この問題に社が取り組み始めたのは、谷内さんが本社の人事部に転勤した時期とちょうど同じ、2002年のある事故がきっかけだった。

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