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「当社の長崎造船所で、客船『ダイヤモンドプリンセス』が火災事故に見舞われました。社を挙げて事故の原因を探る中で、『現場で起きている大切な問題を、社として見落としているのではないか』という声が上がりました。そこで、現場の声にもう一度耳を傾けてみたところ、〝技能伝承〟の問題が浮かび上がったんです。よりよい船をつくること、安全に作業すること、そのすべては、現場の〝技能〟にかかっているわけですから」(谷内さん)
技能系社員として42年間、下関造船所に勤務し、定年退職した現在もシニアエキスパートとして現場を牽引する村上寛さんは、当時を振り返ってこう語る。
「技能を教えたくても、教える相手がいない。そういう状況が長く続きましたから、我々技能系社員は、つくる技能はあっても、教える技能がなくなりかけていました。退職者の送別会は年を追うごとに増え続け、職場から1人、また1人と技能者が辞めていく。現場にとっては切実な問題でしたよ」
現場の声が生かされたのは、技能系社員教育の必要性だけでなく、その育て方にまで及んだ。
「近年、技能の伝承にもマニュアル化やデジタル化が必要だといわれていますが、現場の技能系社員はみな口を揃えて『本当にそうだろうか?』というんです。後進たちにモノづくりの本当の難しさや面白さを知ってもらうには、優れた技能社員の仕事に対する接し方や、生き方、つまり、人格そのものから受け継いでもらいたいものもたくさんある――。ほかの業界から見れば古いスタイルかも知れませんが、昔ながらのその伝え方の大切さに、現場に常にいるわけではない我々も気付き始めました。そこで、我々に合った独自の技能伝承の方法を模索することにしたんです」(谷内さん) |
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