編集部 |
今回の改訂では、数学・理科を中心に、小・中学校の義務教育段階で学ぶ内容が増えます。高校にとっては追い風のように見えますが、生徒の学力向上はどの程度期待できるとお考えですか。 |
臼田 |
中学校の学習内容の充実は、生徒の学力を高めるために必要なことで賛同します。しかし、プラス面だけでなく、マイナス面も慎重に予測しておくことが大切だと思います。
子どもが多かった時代、私が勤務する東京都では、中学校にも物理・化学・生物・地学の各分野専門の教師がいました。ところが、少子化が進んで学校規模が更に小さくなれば、例えば理科担当は物理専門の教師1人で、その先生が第1分野(物理、化学)だけでなく第2分野(生物、地学)まですべて教えるような中学校が増えていくでしょう。授業時数をいくら増やしても、専門教師がいなければ教える内容が偏ってしまう。今でも、本校では中学校時代の学習履歴によって、生徒の習熟度にバラツキが見られます。こうした傾向が更に進むのであれば、対策が必要です。 |
秋元 |
鹿児島県でも小規模の中学校では、ある教科の教師が担当教科以外の教科を教えている例があります。そういう状況で、すべての生徒が分厚くなった教科書の内容を習得できるのかという不安はあります。地域による学力差が、今以上に広がるおそれもあります。
もう一つの不安は、塾への依存度が更に高まるのではないかということです。鹿児島県では、かなりの中学生が塾での指導を受けて高校に入学してきます。中学校での学習量が増えることによって、かえって塾への依存度が高まるのであれば、生徒の受け身的な側面を増長させることにもなりかねません。 |
及川 |
確かに中学校での変化は起こるかもしれません。現行課程に改訂された際にも、学習内容が大幅に削減された影響で、高校の学習についていけない生徒がいました。我々高校教師の使命は、入学してくる生徒の学力がどのように変化しようとも、大学入試を念頭に置いて、生徒の力を一段高いところまで引っ張り上げて送り出すことに変わりはないと思います。大切なことは、教師が常にアンテナを高く張って生徒の変化をつかみ、的確に対応していくことではないでしょうか。 |