指導変革の軌跡 福井県立美方高校「取り組みの効果的な導入と改善」
福井県立美方高校

福井県立美方高校

◎「明・強・清」を校訓とし、国際的視野を持ち、郷土を愛し、地域社会を担う人材の育成を目指す。地域との関係が密接で、地域の要望により、2005年度に連携型の中高一貫教育を始めた。部活動も活発で、07年度はボート部や陸上部、剣道部がインターハイ出場(ボート部は優勝)の実績を上げている。

設立●1969(昭和44)

形態●全日制/普通科・生活情報科・食物科/共学

生徒数●1学年約180名

08年度進路実績●国公立大は、京都大、大阪大、福井大、金沢大、富山大、名古屋工業大、滋賀医科大、福井県立大などに38名が合格。私立大は、駒澤大、東海大、東洋大、日本大、早稲田大、金沢工業大、立命館大、近畿大、関西学院大などに延べ70名が合格。

住所●〒919-1395 福井県三方上中郡若狭町気山114

TEL●0770-45-0793

WEB PAGE●http://www.
mikata-h.ed.jp/


上塚直樹

▲福井県立美方高校

上塚直樹

Uetsuka Naoki
教職歴34年。同校に赴任して3年目。進路指導部長。「自分の持っているすべての力を出し切って生徒の指導にあたりたい」

山口秀輝

▲福井県立美方高校

山口秀輝

Yamaguchi Hideki
教職歴19年。同校に赴任して9年目。進路指導部副部長。「生徒と何でも言い合える関係をつくり、進路希望を実現させていきたい」

村古崇徳

▲福井県立美方高校

村古崇徳

Murako Takanori
教職歴9年。同校に赴任して6年目。進路指導部。「生徒の心に伝わるような言葉を投げかけていきたい」

丸谷寛

▲福井県立美方高校

丸谷寛

Marutani Yutaka
教職歴12年。同校に赴任して9年目。進路指導部。「当たり前のことを当たり前にできる生徒を育てていきたい」


VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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指導変革の軌跡115


福井県立美方高校「取り組みの効果的な導入と改善」

改革精神の継承と地域の支援が
教師の改革への熱意を支える

● 実践のポイント
教師全員がスタディーサポート検討会に参加し、生徒の課題を洗い出す
進路関係職員連絡会によって、教職員の目線を合わせる
地域との密接な関係を生かし、連携型中高一貫教育にスムーズに移行

地域の学校として信頼を取り戻す

 20年前、福井県立美方高校は開校以来の低迷にあえいでいた。同校のある三方上中郡若狭町(2005年に三方郡三方町と遠敷(おにゅう)郡上中町が合併して誕生)は、福井県南西部に位置する人口約1万7000人の町だ。同校は三方郡(当時)唯一の公立高校として1969年に設立された。それまで地域には高校がなく、隣接する市まで通っていた。通学に不便ということもあり、地域の高校進学率は他地域に比べて低く、地域が行政に働きかけて美方高校が設立されたという経緯がある。同校は県立ながら、地域の意識としては「町立・郡立」であり、地域の熱意に支えられた「おらが学校」だった。
 しかし、創立から十数年が経過したころから進学実績が低迷し始め、成績上位の中学生は近隣高校に進学するようになった。次第に、同校の生徒の問題行動が目に余るようになり、地域の信頼を失っていったという。
 地域からの信頼を回復するため、同校が改革に乗り出したのは90年代初めだ。特進クラスの設置を皮切りに、全教師体制による小論文・面接指導の実施、新入生宿泊研修の導入、中学校との懇談会などを次々と導入。一連の施策により進学実績は上昇し、徐々に地域の信頼を回復していった。かつて2割以下だったPTA総会の出席率は6割強まで上昇し、部活動ごとに組織されていた後援会は学校全体を支援する組織へと発展した。改革の経緯と成果は、本誌02年度4月号で取り上げ、大きな反響を呼んだ。

教師全員参加の手厚い指導が進学実績の好調を支える

 あれから6年。進学実績は堅調に推移している(図1)。05年度には地元の三方中学校・美浜中学校との間で連携型の中高一貫教育が始まり、地域とのつながりは更に密になった。新入生合宿、中学校との交流行事などは、今も同校の取り組みの核として続いている。
図1
 改革でいったんは上昇気流に乗った学校でも、ときが経つにつれ、取り組みが形骸化する場合が少なくない。同校は、改革当初の実績をどのように維持しているのだろうか。進路指導部長の上塚直樹先生は、「大規模校にはできない手厚い指導が本校の強み。教師が徹底的に生徒に手をかけていることが結果に表れ、地域の信頼へとつながっています」と話す。
 同校では、学年を問わず全教師が生徒の情報を共有し、指導にあたる。生徒一人ひとりの成績や志望校、受験科目などを教師全員が把握した上で、科目ごとに担当教師を決めて個別に指導している。推薦入試や就職試験対策のための小論文指導・面接指導も、学年や教科を問わず全教師が携わる。これらが大学進学実績や就職実績の好結果に結び付いている。
 04年度には教師全員参加のスタディーサポート検討会を始めた。「03年度に生徒把握のためにスタディーサポートを導入しましたが、検証や事後指導は必ずしも十分ではありませんでした。教師自らがデータを分析し、取り組みの改善につなげる必要がありました」と、進路指導部副部長の山口秀輝先生は導入の背景を話す。
 スタディーサポート検討会は、5月と10月の年2回実施。第1回は、スタディーサポートを全学年で行うため、検討会にも3学年すべての教師が参加する。第2回のスタディーサポートは1・2年生のみ実施するが、検討会には3年生の全教科担当と進路指導部員も参加する。つまり、2回ともほぼすべての教師が参加する。
 3学年担任の丸谷寛先生は、「すべての教師が全学年にかかわる可能性がある以上、他学年の生徒の学力や学習状況、希望進路などの情報を共有しておくことは重要です」と強調する。

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