10代のための「学び」考

原 實

原 實

はら・みのる
1930年東京都生まれ。東京大文学部インド哲学梵文学科卒業後、ハーバード大学に留学。帰国後、東京大助教授、同教授、国際仏教学大学院大学長を歴任。文学博士。専門はインド古典学。古代インドの宗教、文学の文献を中心に研究を進め、インド二大叙事詩を研究し、インド宗教史研究に貢献した功績は国内外で評価されている。現在は東京大名誉教授、日本学士院会員。スウェーデン王立学士院外国人会員。

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10代のための「学び」考

原 實

東京大名誉教授 日本学士院会員
自分の感性を信じて
自分にしかできない研究に挑む

 古代インドで使われていたサンスクリット語(梵語)は、仏教の聖典にも使われ、語彙の豊富さで知られる言語だ。原實東京大名誉教授は、日本では、西洋から輸入した学問であったサンスクリット研究の常識を変えた。原典に正面から向き合い、インド宗教史研究で国際的な貢献を果たしてきたのである。原教授の人生を決めた友や師との出会い、研究の面白さをうかがった。

芸術に囲まれ育った幼少時代

 子どものころは両親の教育方針で、ピアノやヴァイオリンや絵を習ったり、劇場やコンサート、美術館に連れて行かれたりと、芸術に触れて育ちました。小中学校時代は国語や漢文が好きでした。当時の教育は暗記が中心で、漢字の書き取りをしたり、美しい文章を覚えたりと基礎を叩き込まれたことは、生涯の財産となりました。
 中学時代、真面目に勉強した甲斐あって、旧制高等学校に合格し、親元を離れての寮生活をすることになりました。寮では、当時流行していた弊衣破帽(ぼろぼろの衣服と破れた帽子)の姿の先輩たちが、人生を熱っぽく語っていました。先輩たちから、「カントもヘーゲルも知らないのか」と圧倒され、人生の目標のない私は自分の無知を思い知らされたのです。
 そこで自分がなすべきことを考えたあげく、日本の精神文化の根底の一つである仏教を勉強しようと思いました。しかし、両親に反対されながら進学した東京大の文学部では、仏教を学んでいたのはお寺の子弟ばかり。お経も読めない私は、ノートをとることもできず、授業に全くついていけませんでした。そこで皆が大学から学び始めるインド学を選んだのです。


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