団塊世代の大量退職を迎え、高校現場では今後10年間で約3割の教師が定年退職すると予測される。ベテラン教師の経験に裏打ちされた指導力をいかに次代の教師に引き継ぐかは、早急に対策を講じなければならない課題だ。
この課題解決の鍵となるのは、30代の教師だろう。この世代は新卒採用が抑えられていたので教師数が少なく、10年前と比べて全教師数に占める割合が最も減っている(図)。ところが、現在、都市圏を中心に採用が増えているため、今後、20代の教師は増加すると予測できる。このような環境の中、中間に位置する30代が果たす役割は重要となる。
いうまでもなく、高校は、小・中学校と違い、学校によって生徒の学力層が大きく異なる。生徒指導・教科指導・進路指導のいずれもが学校ごとに特色があり、教師に求められる指導力も変わる。しかし、そうした指導力は暗黙知であることが多く、書面や図表などの形式知として引き継ぐことが難しい。従来、指導力を高める仕掛けは、世代間のバランスが取れた教師間では自然と醸成されていた。しかし、完全学校週五日制などによって、教師はますます多忙となり、職員室で雑談をしたり、学校外で交流をしたりする機会が減っている。実際、編集部に読者から寄せられる声の中には、同僚との交流がほとんどないという悩みや、世代間ギャップを背景としたコミュニケーションの難しさが挙げられている。
今後、中核となる30代教師は、どのような問題意識を持ち、日々の指導にあたっているのか。2人の30代の教師の体験を通して探っていく。
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