VIEW'S REPORT
松尾智晴

福岡県・私立福岡工業大学附属城東高校教諭
松尾智晴

Matsuo Tomoharu
新卒採用で同校に赴任し、教職歴15年。数学科担当。学年主任として3年間持ち上がりを2回経験後、現在、1学年担任・学年主任。総勢24人の教師を束ねる。校務分掌は入試広報。
【学校概要】1学年生徒数…普通科426名、電気科135名、電子情報科110名/08年度進路実績…国公立大・大学校54名、私立大延べ1210名、短大・専門学校107名、就職94名

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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活動のヒントを得るために
他校の教師や異業種の人と交流する機会を確保したい

場の空気を感じて生徒に考えさせる授業を

 教師としての最初の転機は10年前、本校の学校改革時に進学アドバイザーとして赴任された数学の先生との出会いでした。その先生に担当する土曜講座を1年間見てもらい、さまざまなアドバイスをもらいました。
 何度も「生徒の思考を妨げている」と言われたものです。「なぜあのときにヒントを出したのか」「例の持ち出し方が悪い」「あの問題にもっと時間をかけてもよかった」など、具体的に指摘されました。先生いわく、「生徒の姿勢や視線、手の動かし方などを見て、場の空気を感じながら、ヒントを出す相手やタイミングを見計らわなくてはならない」。当時の私といえば、「『場の空気を読め』と言われても、どうすればよいのか」というのが本音で、自分としては生徒を見ているつもりでした。ただ、授業で沈黙が続くと耐えきれずに私から話をしてしまったり、学力を伸ばしたくて問題をたくさん解かせたりしていました。そうすれば、生徒の学力が伸びると信じていたからです。
 しかし、先生から指摘を受け、試行錯誤を積み重ねるうちに、「今日はここまで進んだ」「これだけ教えた」とは、教師の自己満足でしかないとわかりました。教師が一方的に教えるだけでは、生徒の学力は一定以上伸びません。生徒が本当に成長できるよう、生徒主体で進める授業を目指すようになりました。
 私は生徒の書いた答案に赤字を入れるとき、必ず一番薄い赤色のインクを使います。「教師が、生徒の書いてきた答案というメッセージよりも濃く書くべきではない」。そう教わった言葉が今も心に強く残っているからです。生徒一人ひとりを見て、その思いを感じて、変化に対応するのには早くなったように思います。

成長期にある若手にこそ学外での交流が必要

 先生に言われた「生徒に考えさせる授業」の実現はまだまだです。受け身の生徒をどうすれば自ら考えるようにできるのかは大きな課題です。授業では例題の解答にわざと誤答を書いて間違えている箇所を考えさせたり、「学習ノート」として毎日、自由課題に取り組ませたりしています。生徒は宿題をきちんと提出し、定期考査で良い点を取りますが、教師が与えた到達度で止まってしまう。授業を通して、生徒が主体的に学びに向かう方法を模索しています。
 本校では教科ごとに最低月1回は「授業改善研修」を行っています。ただ、教科指導力の向上には、学外の人と交流する必要もあると考えています。他校や異業種とのかかわりは、新しい発見につながるからです。また、教師は人間性が問われる職業です。さまざまな人との交流を通して教師が得たことは、すべて生徒の成長に結び付きます。成長期にある若手にこそ、勉強の場や機会がもっと必要なのではないかと思います。
 私は教師の研究会があると聞けば他県でもできるだけ参加しますし、教育とは直接関係なくても興味のある講演会には出かけています。学年団の先生にも「こういう会に参加しませんか」と声をかけ、「学外での研修」を勧めています。校内で指導力を伸ばすのは大前提ですが、外にも目を向けて課題解決のヒントを探していきたいです。ただ、多忙のせいもあり、学外に出かけるのはなかなか難しいのが現状。有益な情報を収集し、生徒を啓発するような授業力を身につけることが自身の課題です。

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