特集 中・高・大とつなげる「学び」と「指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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多忙さで活動が 中途半端にならないように

北澤  ただ、いくら「教科指導力で勝負」といっても、多忙化と共に教材研究や教科指導の前準備にあてる時間を確保するのが、年々難しくなっています。一人の教師としてこれはとても悩ましいことです。
山尾  そう、問題はそこなんですよ。私も高校の教師に一番求められるのは、教科指導力だと考えています。いわゆる「学士力」として、いま大学現場で求められている論理的思考力や問題解決力、数量スキルや情報リテラシー、さらにコミュニケーション能力といった力は、教科指導の中でこそ養わなければいけないと思います。
 ところが今の教師は一方で、キャリア教育にも本腰を入れなくてはいけないし、総合的な学習の時間にも取り組まなくてはいけません。土曜講座等の課外の準備もあります。それらの仕事が学校で終わらなければ、家に持ち帰って作業をするわけですが、それでも足りないのが実情です。そうなると、最後は教材研究にかける時間を犠牲にするしかありません。
 私自身、一番怖いのは、すべてが中途半端になってしまうことです。キャリア教育も、やるなら徹底してやるべきです。大学や企業、研究所に足を運び、学生や職業人、研究者と直に言葉を交わす機会があってこそ、生徒の視野は未来へと見開かれます。バスツアーで大学巡りをして終わりとか、受験雑誌等で職業調べをして終わりというのでは、身につくものや気づきは少ないでしょう。
 日々の授業にも同じことが言えると思います。教師が教材研究を怠ったために質の高い授業ができなければ、生徒の知的好奇心をかきたてるのは不可能です。
 教師に抱えきれないほどの仕事が降りかかる中で、時間的な制約のために、さまざまな活動がうわべだけのものになってしまうことを私は危惧しています。もしそのようなことになってしまったら、そもそも何のために自分たちはそうした活動をしているのか、教師も生徒にも意義がつかめないものになってしまいます。
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思考力、リテラシー、
コミュニケーション能力…
教科指導の中でこそ養いたい


兵庫県立姫路西高校 山尾孝司
Yamao Kouji


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