「学びの共同体」は、学校を学び合いの場にし、生徒一人ひとりの学ぶ権利を実現する授業実践だ。生徒同士の学び合いを通して、自己の知識を整理したり、多様な考えに接したりして、学習意欲や学力の向上をねらいとする。従来は小・中学校の取り組みというイメージが強かったが、近年、高校でも取り入れる学校が増えてきた。しかも、進路多様校だけでなく、地域を代表するような進学校にまで広がりつつある。
静岡県立沼津城北高校が2009年4月から全学年の授業で「学びの共同体」を導入するきっかけとなったのは、従来の一斉授業では立ち行かなくなった現状を打破したいという思いからだった。国語科担当の浅川典善教頭は、今の生徒の印象を次のように話す。
「国語の授業の中心は教師と生徒との対話ですが、それができなくなってきたと強く感じています。以前は、生徒に発問をし、そこで出てきた新しい視点を別の生徒につなぐ、という広がりが生まれていました。しかし今は、対話にならず、ほかの生徒につながらない。結局、一方的な講義形式になるという悪循環に陥っています。関係性の豊かさも学習意欲も失われていると感じています」
鈴木良平校長は、「他校でも学年が上がるたびに学力層の幅が広がる傾向にありますが、本校でも1年生7月と11月の模試を比べると、その傾向がはっきり見られ、学年が進むにつれ拡大しています」と分析する。
「学びの共同体」が学力向上の起爆剤になるのではないか――。そうした期待が教師の背中を押したのである。
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