VIEW'S REPORT
鈴木良平

▲静岡県立沼津城北高校校長

鈴木良平

Suzuki Ryohei
教職歴34年。同校に赴任して2年目。「生徒のやる気を育てるきっかけをつくってあげたい」

乗松修司

▲静岡県立沼津城北高校教頭

乗松修司

Norimatsu shuji
教職歴27年。同校に赴任して2年目。「生徒には、謙虚に学び続けて、将来立派な社会人になってほしい」

浅川典善

▲静岡県立沼津城北高校教頭

浅川典善

Asakawa Fumiyoshi
教職歴27年。同校に赴任して2年目。「生涯学び続け、社会に貢献できる人材を育てていきたい」

岩田香緒里

▲静岡県立沼津城北高校

岩田香緒里

 Iwata Kaori 教職歴12年。同校に赴任して2年目。「高校生活において、社会に出ても困らない力を身に付けてほしい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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VIEW'S REPORT

「学びの共同体」の導入で学力向上を目指す

一斉授業から学び合う授業へ――静岡県立沼津城北高校の挑戦

生徒の気質や学力の変化等、高校現場にはさまざまな課題がある。その中で、 「教師の課題意識をどのように改革へ結び付けるのか」「新しい取り組みをどのように導入していけばよいのか」 といった声は多い。
そこで、2009年4月、全学年で授業に「学びの共同体」を導入することに踏み切った静岡県立沼津城北高校を取材し、課題意識と導入までのプロセスを追った。

一斉授業の行き詰まりから 「学びの共同体」導入に期待

 「学びの共同体」は、学校を学び合いの場にし、生徒一人ひとりの学ぶ権利を実現する授業実践だ。生徒同士の学び合いを通して、自己の知識を整理したり、多様な考えに接したりして、学習意欲や学力の向上をねらいとする。従来は小・中学校の取り組みというイメージが強かったが、近年、高校でも取り入れる学校が増えてきた。しかも、進路多様校だけでなく、地域を代表するような進学校にまで広がりつつある。
 静岡県立沼津城北高校が2009年4月から全学年の授業で「学びの共同体」を導入するきっかけとなったのは、従来の一斉授業では立ち行かなくなった現状を打破したいという思いからだった。国語科担当の浅川典善教頭は、今の生徒の印象を次のように話す。
 「国語の授業の中心は教師と生徒との対話ですが、それができなくなってきたと強く感じています。以前は、生徒に発問をし、そこで出てきた新しい視点を別の生徒につなぐ、という広がりが生まれていました。しかし今は、対話にならず、ほかの生徒につながらない。結局、一方的な講義形式になるという悪循環に陥っています。関係性の豊かさも学習意欲も失われていると感じています」
 鈴木良平校長は、「他校でも学年が上がるたびに学力層の幅が広がる傾向にありますが、本校でも1年生7月と11月の模試を比べると、その傾向がはっきり見られ、学年が進むにつれ拡大しています」と分析する。
 「学びの共同体」が学力向上の起爆剤になるのではないか――。そうした期待が教師の背中を押したのである。

「定員割れ」の現実を前に 他校にはない特色を打ち出す

 学び合いによってコミュニケーション能力を高め、温かい人間関係を築いてほしいという思いも、「学びの共同体」を導入する背景の一つだ。鈴木校長は、生徒の友人関係の希薄さを次のように指摘する。
 「本校にも挨拶や対人関係が苦手な生徒が見られます。クラスメイトと話すこともないまま黙って授業を受けて、1日が終わると1人で家に帰るとしたら、学校に魅力を感じられるわけがありません。学び合いを通して人とのかかわりを学んだり、1人でいるクラスメイトにさりげなく声をかけたりするような助け合う関係を校内につくり上げたい。それも『学びの共同体』の導入を決意した大きな理由の一つです。助け合うところに学ぶ意欲も生まれ、社会で必要な人間関係力も育まれていくはずです」
 同校にとって、大きな課題はもう一つあった。08年度高校入試で定員割れとなり、再募集をしたが19人の欠員のまま新学期を迎えたのである。もちろん、同校は努力をしていなかったわけではない。特進クラスの設置(09年度入学生より廃止)、週3日間の0限授業、初期指導による学習習慣付け、勉強合宿、放課後講習・週課題などを行ってきた。例年10人前後が国公立大にも合格している。
 しかし、定員割れとなってしまった―。特色ある取り組みを導入し、他校との差異化を図らなければならない。そうしたねらいも、「学びの共同体」を導入する動機の一つだった。教頭の乗松修司先生は、中学校教師と話す中で自校の特色が明確でないと知った。
 「学校説明会のときに中学校の先生によく言われたのは、『進学指導に力を入れていることはわかりますが、沼津城北高校の特色が見えません』という指摘です。他校も行う進学指導だけでは、中学校にアピールできない現実がありました。『学びの共同体』の導入を決めてからは、本校の特色が明確になり、興味を持って話を聞いてくださる中学校も多くなると思います」
 中堅の公立高校にとっては、並大抵の取り組みでは他校との差異化を図れない時代なのかもしれない。

スクールデータ

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