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「生徒の目線で問題を解く」それが真の入試分析です |
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各大学の入試動向の分析もまた、生徒の進路実現においては必要不可欠なものです。
センター試験の自己採点後の出願校決定から個別学力試験に至るまで、私たちは生徒にさまざまなかたちでかかわります。その間の生徒の伸びは、彼ら一人ひとりの性格はもちろん、その知的個性や学習歴を熟知しているだけではなく、各大学の入試をしっかり分析し、その特徴や動向を把握している教師がいて初めて可能です。合否判定を機械的に押しつけるのではなく、「きみなら必ずゴールまでたどり着ける」と自信を持って生徒の背中を押してくれる教師は、彼らに何よりも大きな勇気と希望を与える存在であるはずです。
入試問題の分析は高校の教科指導の出発点になるとも言えますが、実際に問題を分析する時に、私たち教師が忘れてはならないことが一つあります。それは「高度な知的訓練を受けた大人のやり方で入試問題を解くのではなく、自分が今教えている生徒の目線で解く」ということです。
高校の教科書に載っていない知識やそこで扱われていないスキルを使って解いてしまったら、それは高校教師に求められる入試分析にはなりません。
例えば、私の担当教科である英語の入試問題では、教科書には出てこない単語が相当数使われていることがあります。だからと言ってそうした難解な単語を「高校で習得させるべき語彙」に数える必要はありません。出題者にも、そのような意図はないはずです。大切なことは、教科書レベルの語彙を駆使して文脈を把握し、難解な単語の意味を類推することです。教師はそのプロセスを自分で経験して、それを生徒に提示する。それこそが、高校教師による高校生のための入試問題分析の基本です。
教科書中心の日々の授業の中で身につけた力で、難関大の入試問題を解くことを経験した時、生徒は大きく変わります。「自分たちでも解くことができる」という自信が生まれるだけではなく、毎日の授業の大切さを理解するようになります。だからこそ、入試問題の分析は、すべての生徒に多くのメリットを還元できる作業であり、たとえ今難関大への進学希望者が少ない高校であったとしても、生徒の力を飛躍的に伸ばすきっかけを作りうる価値のあるものと言えるのです。
実は私には、今も忘れられない苦い経験があります。20代の終わりのことでした。ある3年生の生徒に「先生、どうしても英語の勉強の仕方が分からないんです」と言われました。志望校を明確に持ち、将来目指す職業すら心に決めているその生徒に、しかも入試が迫った秋になって、どこから手をつければよいのか分からないと言わせてしまった……。私はこれまで生徒に何を教えてきたのかと、大きなショックを受けました。
勉強の仕方が分からないと嘆く生徒に「とにかくやってみなさい」と言うのは簡単です。しかし、その前に自分は「その生徒の目線」で授業しているのかを、若い先生方にはぜひ考えていただきたいのです。私はあの時まで「入試問題を楽々解ける大人の目線」で生徒を教えていたのだと思います。
決して教師の自己満足ではなく、生徒の目線で生徒のための入試分析が行えた時、私たちは初めて生徒の学力向上と進路目標の実現を保証できるのではないでしょうか。 |
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