指導変革の軌跡 鳥取県立倉吉西高校「進学実績向上」
鳥取県立倉吉西高校

鳥取県立倉吉西高校

◎2009年に創立95周年を迎えた伝統校。99年度に単位制普通科高校に移行した。07年度から「倉西夢きらりアクションプラン」「鳥取大との連携事業」など生徒の視野を広げる活動を取り入れ、進学実績を着実に伸ばす。鳥取県版環境管理システム(TEASⅡ)の認定校として、地球環境の保全に関する教育にも取り組む。

設立●1914(大正3)

形態●全日制/普通科/男子校

生徒数●1学年約160名

09年度入試合格実績(現浪計)●国公立大は鳥取大、島根大、岡山大、徳島大、愛媛大、島根県立大、下関市立大などに58人が合格。私立大は、青山学院大、中央大、東京女子大、同志社大、立命館大、関西大、関西学院大、甲南大などに延べ155人が合格。

住所●〒682-0925 鳥取県倉吉市秋喜20番地

TEL●0858-28-1811

WEB PAGE●http://www.
torikyo.ed.jp/kuraw-h/


横濵純一

▲鳥取県立倉吉西高校前校長(現・鳥取県教育委員会事務局参事監兼高等学校課長)

横濵純一

Yokohama Junichi
教職歴29年。同校に赴任して3年。「夢を語ろう、希望を持とう、可能性は無限大!」


VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 1/15 次ページ

指導変革の軌跡121


鳥取県立倉吉西高校「進学実績向上」

高大連携と探究活動で
定員割れの危機から県内有数の人気校に

変革のステップ
背景(STEP1)
実践(STEP2)
成果(STEP3)
◎単位制に移行し特色化を図ろうとしたが、進学実績が低迷し定員割れ。地域からの信頼が失われる危機に直面
◎「倉西夢きらりアクションプラン」「鳥取大との連携事業」などで、生徒の視野を広げ、知的好奇心を高める
◎夢の実現に向けて努力する生徒が増え、現役国公立大合格者数が倍増。過去最高の実績を2年連続で更新する

自由な科目選択が かえって進路実績の低下を招く

 「まさかここまでの結果が出るとは――」
 2008年3月、鳥取県立倉吉西高校の職員室は歓喜と驚きの声に包まれた。前年度18人だった現役国公立大合格者が、この年35人と倍増し、過去最高の実績となったのだ(図1)。教師が感慨を抱いたのも無理はない。この年の3年生は、入学時に定員割れをした学年だった。その後も学力は伸び悩み、2年生7月の進研模試では、D判定以上の生徒が7人という状況だった。それが、本番では過去最高の実績を上げた――。07年度から進路指導主事を務める亀井修平先生は、躍進の理由を次のように語る。

「今までと同じことをしていたのでは、学校は変わりません。前例やマニュアルにとらわれず、我々若手教師に何でも『やってみろ』と、とことん挑戦させてくれる学校の雰囲気が、改革を進めるパワーとなりました。そして、生徒に高い理想を持たせ、その意識を最後まで途切れさせないように指導したことが、この結果につながったのだと思います」
 3年前、同校は出口の見えない低迷にあえいでいた。高校入試の志願者数は地域からの学校評価の指標となるが、同校は05年度入試で16人の定員割れだった(当時入学定員200人)。地域からの期待に十分応えきれていない現実を、改めて突き付けられた形となった。
 原因の一端は、大学進学実績の低迷にあった。同校は、99年度に単位制の普通科高校として新たな一歩を踏み出した。特色化を図り、併せて進学実績を向上させ、地域にアピールすることが狙いとされた。
 しかし、改革は裏目に出た。単位制の利点は、将来の進路に応じた科目選択が可能なことだ。ところが、科目選択の自由度を高めすぎたために、いざ志望校を決める段階で受験に必要な科目を履修していなかったり、受験のためだけの科目選択になっていたりと、弊害が出たのだ。
 その結果、単位制1期生の実績は国公立大合格者11人と、全く振るわなかった。大学入試に必須の科目を必修にするなど軌道修正をしたが、進学実績は下がり続け、地域の信頼を取り戻せないまま、ついに定員割れとなった。保護者には「校内順位が40位以内でなければ、国公立大はあきらめた方がいいですよね」と言われたこともあり、中学校関係者の間では「今後、西高は存続するのか」といったうわさもささやかれ始めた。
図1

  PAGE 1/15   次ページ