未来をつくる大学の研究室 男女共同参画社会の実現に向け憲法学からジェンダーに迫る
岡本寛

岡本寛さん

Okamoto Hiroshi 東北大大学院法学研究科助教 〈岡山県立高梁(たかはし)高校卒業〉

蘇恩瑩

蘇恩瑩さん

Soh Eunyoung
東北大大学院法学研究科研究フェロー 〈ソウル・クジョン高校、 梨花(イファ)女子大法学科卒業〉

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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若手研究者が語る

より良い法律を作るために
現実の諸問題の矛盾を追究

Q:なぜ法学分野を目指したのですか?

A:
岡本 私は明確な問題意識があって法学部に進んだわけではありません。高校までは理系でしたが肌に合わず、社会を見る目を養いたいという漠然とした思いで法学部に進みました。研究者になろうと思ったのは、3年生から所属した憲法のゼミがきっかけです。憲法の教科書だけでは分からない歴史のダイナミズムを感じられたからです。
 私は修士課程まで母国の韓国で教育を受け、博士課程から東北大大学院に進みました。韓国でジェンダー法学を専門に研究している大学は、ソウル大と梨花女子大だけです。特に、私が卒業した梨花女子大はジェンダー教育の先進校で、美術や社会学、法律学などの教養科目とジェンダー教育を結び付けた授業がありました。そうした授業を受ける中で、社会には厳然として男女差別が存在することが分かってきました。それを解決するために、私の専門である法律学から何ができるかを考え、修士課程では性暴力をテーマに研究しました。そして、辻村先生がCOEプログラムの視察で来韓されたのを契機に、研究を更に深めようと留学プログラムを活用して来日しました。

Q:現在の研究内容を 教えてください

A:
岡本 アメリカにおける「討議デモクラシー」について研究しています。アメリカにはタウンミーティングに代表されるように、小さな共同体で討論を重ね、民意を醸成していく伝統があります。こうした伝統は、ヨーロッパでもそれほど多くはなく、日本では全く見ることができません。この伝統を統治機構と関連付けながら分析しています。
 憲法の中で女性の人権がどのように位置付けられるか、日韓の憲法比較を交えながら研究しています。憲法には男女の平等を規定する条文があります。しかし、一人ひとりの女性の生き方や働き方はさまざまで、それは個人の尊厳や幸福追求権などをうたった日本国憲法では13条の規定でも保障されるべきものです。
 博士論文には、男女の平等と個人の尊厳のバランスをどのようにとらえるのかという視点も盛り込みました。法律は今あるものがすべてではありません。憲法の理念や人々の生活とかけ離れているようであれば、改善する努力をすべきです。これからも、単なる「研究」に終わらせないよう、現実の諸問題と密接に結び付くテーマを追究し、男女共同参画社会の実現に向けて努力していきたいと思っています。

Q:高校生へのメッセージをお願いします

A:
岡本 法学部に進んで良かったと思うのは、日本社会を相対化して見られる「目」を養えたことです。日本では会社や学校など特定の共同体への帰属意識が強い。しかし、いざ世界を見渡すと、欧米には自発的結社を組織する伝統があり、会社は会社、地域の共同体は別の世界というように切り離して考えられています。日本社会の特殊性にも目を向け、広い視野で世界を見渡してください。そうすることで、社会が全く別のものに見えてくるかもしれません。そういう視点を養うために法律学を専攻することも、選択肢に加えていただければうれしいですね。
図

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