指導変革の軌跡 東京都・私立錦城高校
東京都・私立錦城高校

東京都・私立錦城高校

◎福沢諭吉の高弟である矢野龍渓が三田の慶應義塾内に創立した「三田英学校」が前身。のちに神田錦町へ移転し「錦城学校」と改称、1963年に現校地に移った。97年度、男子校から共学校とした。「知性・進取・誠意」を校訓とし、進取の精神で知性を磨き、誠意ある人間となることを目標にしている。部活動が活発で1年生の加入率は99%。

設立●1880(明治13)年

形態●全日制/普通科/共学

生徒数(1学年)●約500名

09年度入試合格実績(現浪計)●国公立大には北海道大、筑波大、埼玉大、電気通信大、東京工業大、首都大学東京などに48人が合格。私立大は、青山学院大、学習院大、慶應義塾大、上智大、中央大、法政大、明治大、早稲田大、立命館大などに延べ1399人が合格。

住所●〒187-0001 東京都小平市大沼町2-633

TEL●042-341-0741

WEB PAGE●http://www.
kinjo-highschool.ed.jp/


梶原政利

▲錦城高校校長

梶原政利

Kajiwara Masatoshi
教職歴・赴任歴共に38年。「『本気になれば、自分と未来は変えられる』ということを生徒に伝えたい」

大音雅克

▲錦城高校

大音雅克

Ooto Masakatsu
教職歴・赴任歴共に27年。進路指導部長。「生徒のために、生徒と共に、という気持ちを忘れないようにしたい

佐藤典生

▲錦城高校

佐藤典生

Sato Norio
教職歴・赴任歴共に26年。1学年担任。「生徒の立場に立った、分かりやすい授業を展開したい」

福石さくら

▲錦城高校

福石さくら

Fukuishi Sakura
教職歴13年。同校に赴任して12年目。進路指導部。「生徒が楽しいと思える授業をしたい」


VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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指導変革の軌跡125


東京都・私立錦城高校「進学実績向上」

「2年生の大切さ」の共有が
進路実現の後押しとなる

変革のステップ
背景(STEP1)
実践(STEP2)
成果(STEP3)
◎模試の活用や教師の意識統一が課題に。好調な進路実績を維持しつつも攻めの改革を継続
◎「進路情報交換会」で教師間の目線合わせとノウハウの共有を実現。模試の活用、データに基づいた指導を徹底する
◎十数年で国公立大、早慶上智の合格者はいずれも2倍増。09年度入試では過去最高の実績を上げる

共学化、都立校の学区撤廃で好調な進学実績を堅持

 錦城高校は、毎年、難関私立大に述べ数百人が合格する私立の進学校だ。特にここ10年での変化は著しい。2009年度入試の合格者数は、7年前の02年度入試と比べ、早稲田大で20人から50人、上智大で2人から17人と増加している(図1)。08年度卒業生の3年次6月の進研マーク模試の結果を過年度と比べても、国英地歴公民の総合偏差値が、98年度卒業生46・0に対して08年度には58・2、数英理の場合も10ポイント以上も伸びている。
 躍進のきっかけは、97年度の男女共学化だ。男子校時代には志望を貫くには浪人も是とする雰囲気があったが、女子が入り現役志向の生徒が増えたことによって、生徒の進学に対する姿勢が変わり始めた。
 更に、03年度に都立校の学区が撤廃となった影響も大きかった。近隣の難関都立高校の併願者が入学するようになり、例年500人程度の入学者が03年度は700人を超えた。その生徒が卒業した06年には、国公立大・早稲田大・上智大の合格者数が共に前年の倍以上となったのだ。

図1:合格実績の推移(過年度生含む)

春の「進路情報交換会」でノウハウの共有を促進

 躍進の理由は、外的要因によるものだけではない。学校全体で課題を共有し、教師が足並みをそろえていく上で、大きな役割を果たしているのが、毎年4月に行われる「進路情報交換会」だ。新旧3学年団の引き継ぎを目的として始められたが、数年前から、旧3学年団と全学年の教師で情報提供・質疑応答を行う場となった。
 最大の特徴は、旧3学年担任に詳細なアンケートを取り、回答を他学年の学年運営にも生かしてもらう点だ。入試を終えたばかりの3学年団に、「面談を実施した時期とポイント」「進路指導で留意した点」「自分のクラスの入試結果についての講評」などを聞いてまとめ、交換会までに配布。会では、旧担任が所見を述べ、他学年の教師からの質問に答える。
 このアンケート結果こそ、同校のノウハウの集積だ。例えば、「良い結果を残した生徒はどういう状態だったか」という問いに対し、多くの教師が「1年生から授業にまじめに取り組んでいた」「2年生から自分の志望を持っていた」と答えた。「3年生までに英語の偏差値が65以上に上がれば、早稲田・慶應・立教は合格できる」といった回答には、生徒の実態を踏まえた教師の入試に対する的確な分析眼がうかがえる。
 逆に、「結果が出なかった生徒は何が問題だったのか」の問いに対しては、「受験準備のスタートの遅さ」に加え、「規則正しい生活習慣が身に付いていなかった」というような課題を提起する教師が多かった。「一般入試について感じたこと」には、「入試の多様化が進んでいるので、その生徒に合った入試形態を選ばせることが大切」「A大は公募制推薦入試が入りやすく、一般入試は厳しくなった」といった回答が寄せられた。
 教師は経験を直接伝え、他学年とも共有することによって、入試傾向を肌で感じると共に、指導の普遍的な課題にも気付くのである。


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