地方公立高校の挑戦
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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地域一貫教育の入り口と出口が連携

 地域の教育資源を最大限に活用する取り組みとして、08年度からは「出身小学校へのインターンシップ」が始まった。高校1年生が各出身小学校に出向き、3日間の補助教諭体験を行うのだ(図3)。
 「地域にある企業は限られています。中学校での職場体験と差異のあるものとするには、どうすればいいか考えました」(加藤先生)
 芸北分校はインターンシップの狙いを「働くことの厳しさを知る」「働くことで得る喜び(自己有用感)を体験する」「人に自分の考えなどを伝えることの難しさを知り、同時に聴くことの大切さを知る(コミュニケーション能力の育成)」の3つと定めた。その上で「鮭が大海から故郷の川に戻ってくるように」(小田分校長)、分校を卒業した生徒が、将来教育者として地域に戻ってくることを願ったのだ。
 受け入れ小学校の一つ、北広島町立芸北小学校の菅川知由校長は「芸北学園構想の入り口を担う自負を持って取り組みに参加した」と語る。
 「小学生に高校生の姿を見せることは、地域でこんなふうに育つのだというモデルを見せることになります。だから、小学生には『お兄さんお姉さんみたいになるには、今どうすればいいのか』を話しました」(菅川校長)
 09年度には、芸北分校は県立広島大との連携を深め、小中高大を一貫した教育活動を始めた。夏休みに県立広島大の学生を招き、分校生徒に補習を実施すると共に、芸北中学校をはじめ周辺の7中学校に声をかけ、芸北分校に興味のある中学生が分校で大学生と学ぶ「合同サマーセミナー in 芸北」を初めて実施したのだ。
 「今後はコミュニティー・スクールを設置し、教育力を継承していく人材、組織を地域につくりたいですね。芸北学園構想の理念は、地域の人たちにも受け継がれ、守られていくべきものですから」(小田分校長)
 地域との連携で教育資源を最大限に活用する芸北分校。その進学実績は、国公立大合格者数を見ても、08年度入試で5人(卒業生29人)、09年度入試で3人(卒業生16人)と着実に向上。部活動も、伝統ある神楽部やスキー部は全国レベルで活躍。野球、バレー、卓球、陸上、ソフトテニスの各部も県大会出場などこれまで以上の成果を上げている。こうした中、芸北中学校からの地元進学率は86%と向上、更に近隣の中学校からの進学者も増加するなど、地域からの信頼を確実に取り戻している。
 「小規模校でもやってやれないことはないという『芸分魂』を、子ども、地域、そして芸北学園構想にかかわるすべての教師がこれからも大切にしていきたいと思っています」(加藤先生)

図3:出身小学校へのインターンシップ活動の流れ(08年度)

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