07年度、芸北分校は連携校の芸北中学校の3年生・31人に対し、「高校0学期」の取り組みを始めた。これは、芸北分校の自習室で週3回80分間、全員参加の自学自習を行い、2週間に1回、英語と数学のアチーブメントテストを実施。加えて、希望者には週2回高校の部活動への参加を認めるというものだ。中学生の日常に高校生活を存在させることで、学習や進路の意識を高めようという狙いだ。
多忙な高校生に対してこれ以上何かを仕掛けるのは難しい。ならば、芸北学園構想の精神を生かして中学生に働き掛けようというわけだ。だが、日常的に中学生が高校を訪れるとなると、「活動中の監督はどちらが行うのか」「芸北分校に進学しない生徒も参加させるのか」「保護者へは誰が、どのように説明するのか」など、課題が続出。中高合同の職員会議では、議論が紛糾したという。
「正直に言えば最初はけんかしているようだった」と加藤先生は振り返る。それほど反発し合っていた両者が次第に歩み寄っていったのは、電話やメールではなく、直接顔を見ながらお互いの不安、不満を出し合う中で、「限られた地域の教育資源を最大限に生かすべき」という思いは一致していることが分かったからだ。
最初、中学生からも「なぜわざわざ芸北分校に出かけるのか」といった声が上がった。しかし、実際に取り組みが始まると、生徒たちの様子も変わっていった(図2)。
「自学自習も、初めのうちは渋々やる様子でしたが、次第に80分間集中できるようになりました。中学校の授業態度も落ち着きが増して、朝の10分間読書で時計ばかり気にしていたような生徒が、読書に没頭するようになりました」(芸北中学校研究主任・沼田令子先生)
「自学自習も部活動も、芸北分校以外の高校に進学する生徒も受け入れました。分校に来るかどうかは関係なく、同じ地域の子どもとして力をつけようと考えたのです。分校進学を前提に考えていたら、この取り組みはつぶれていたかもしれません」(小田分校長)
この「高校0学期」の取り組みを経て芸北分校に進学した生徒の成績は、入学後大きく伸びていることが「スタディーサポート」の分析結果で明らかになっている。「やればできる」ということを、生徒も教師も改めて実感したのだ。
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