地方公立高校の挑戦
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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文武一如の生徒にすべきこと、してはならないこと

 真の希望進路が実現できる分校に――。06年度から同校では学習と進路を柱とした新しい取り組みに着手していった。
 「前年度に29人も送り出してくれた地域の期待にまず応えようと、高2生に対して、秋以降を『高校3年生・0学期』と位置付けて進路ガイダンスを開催しました。大学入試の現状とそれに向けての心構えを説きました。また、放課後や土曜日に図書室を自習室として開放し、受験生としての意識付けを行いました。全学年に対しては、定期テストの2週間前に、全科目の範囲、出題ポイント、学習のアドバイスをまとめ、配布しました(図1)。部活動が盛んな本校だからこそ、部活動と勉強の両立を生徒に求めたのです」(加藤先生)
 07年度には夏期講習で広島大の学部生、院生を招き、補習授業、学習相談を実施。更に、08年度からは進研模試の成績アップ者に対して、表彰状と「芸分魂えんぴつ」の贈呈を開始した。
 「芸分魂えんぴつは、芸北分校短歌賞などの課外活動の優秀者に贈っていたものです。部活動と勉強の垣根を取り払い、模試を生徒の生活の中にしっかりと位置付けようとしたわけです」(進路担当・難波正志先生)
 在校生の進路・学習意識の向上のための施策を迅速に打ち出していった同校だが、教師の脳裏には「生徒に無理をさせてはならない」という思いがいつもあったという。
 「本校は、勉強だけすればよい学校ではありません。部活動はもちろん、農業教育の一つであるリンゴの袋かけ、スキー実習、伝統芸能である芸北神楽と、生徒はいろいろなことに取り組んでいます。勉強以外の保護者のニーズにも応えられるよう、生徒の活動時間を確保しなければならないのです」(分校長・小田均先生)
 「芸北分校では勉強と課外活動は不可分のもので、生活の中に常に一体となって存在するものです。本校では文武両道ではなく、文武一如なんです」(難波先生)
 「勉強以外」の時間が大切にされる芸北分校らしさを守りながら、真の希望進路を実現するため、同校の教師たちは改革の視点を大きく外へと向けていった。

図1:第2学年1学期中間テスト(抜粋)

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