特集)自立を支える「学校」と「家庭」の連携
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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学校の方針をしっかり伝え保護者の顔を学校に向ける

─今の保護者と生徒の関係に対して、学校はどのような働き掛けをすればよいのでしょう。
山本 私は「親子で対決してください」と伝えています。例えば、「大学選び」は多くの子どもにとっては初めての大きな試練です。そうした重要な節目では、親子が率直に意見をぶつけ合うことが大切です。本校では、「保護者対象土曜日講座」を学期に1回実施し、入試制度や学費、就職や資格取得のデータの見方など、親が子どもの進路を考えるための材料を提供しています。親子で話し合うきっかけにしてほしいからです。私立大の定員割れが相次いでいますから、卒業後に母校がなくなるという事態も十分あり得ます。大学の財務状況の見方を分かりやすく示したりしながら、志望校を多面的に検討できるように工夫しています。 1学年保護者面談資料

クラブ合同保護者会資料
柴崎 本校では、保護者面談の場を重視しています。事前に進路希望調査や学習状況調査を行い、生徒の状況を把握した上で面談に臨みます。特に3年生は、志望校はもちろん、「自宅通学が必須か」「下宿は可能か」「奨学金は申し込んでいるか」まで把握し、保護者と面談を行うようにしています。そして、安易に妥協しようとする生徒や保護者に、「人生はそう簡単に思い通りにならないのだから、壁にぶつかった方がよい」と伝えています。社会に出れば、苦手な年配の上司と席を並べたり、難しい顧客を相手にしたりすることは日常茶飯事です。初めての試練である大学受験を通して挫折感や達成感を味わう経験こそが、子どもの自立につながるということを、保護者にも理解してほしいのです。
遠藤

本校では「クラブ合同保護者会」(*2)を実施しています。以前は、早めに受験勉強に集中させたい、あるいは部活動のために成績が下がったという理由で、部活動をやめさせようと考える保護者がいました。そこで、6月と2月の年2回、私が顧問をするサッカー部をはじめ、13の部の保護者を招き、部活動加入率と評定平均値や入試の得点との関係、部活動加入者の進学先一覧など、客観的なデータを示しながら、部活動と学習は両立できることを伝えています。我々の説明を聞いて考え直してくれる保護者や、勉強ばかりではない学校だと安心感を抱く保護者も多いようです。

─根拠を基に情報提供を行い、保護者の安心感を高めることが大切ということでしょうか。
遠藤 保護者会で特に意識しているのは、指導方針をきちんと示しておくことです。「本校の生徒は皆よいお子さんですが、問題がある時は厳しく叱りますので、ご理解ください。叱る理由は必ず言いますから、理不尽と感じられたらご連絡ください」と言っています。なぜそのような指導をするのかについてあらかじめ根拠を示して説明しておけば、保護者の誤解も減り、むしろ積極的に協力してくれるようになります。

*2 本誌2004 年9 月号「ナレッジの継承」で紹介


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