─生徒や保護者の価値観を「自立」に向けさせるためには、どのような気付きが必要とお考えですか。 |
山本 |
「勝ち組」「負け組」という言葉があるように、今の社会は「一部の成功者」と「その他大勢」という図式で見られています。しかし、社会的な成功とは別に、自分自身の人生を充実させるために上を目指して頑張り続けることが大切だと、私は思います。「大学入試」という機会を通して、「できるだけのことはした」と生徒が思えることが大切ではないでしょうか。 |
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遠藤 |
努力しなければ、目標よりも上に行くことはありません。私は生徒に「自分にとっての難関大を見つけ、そこを目指しなさい」と言っています。大学名だけで選ぶのではなく、かといって安易に志望を落とすのでもない。自分なりの夢や目標を見つけて頑張った経験こそが将来、役に立つことを伝えたいのです。 |
柴崎 |
私は、安易に志望を下げようとする生徒には「それなら、就職ができればどの会社でもよいのか」「結婚できるなら、誰とでもよいのか」という言葉をぶつけています。志望を下げるのは、多くは壁にぶつかった時です。しかし、これからの人生において、壁にぶつかる経験は大学受験以外にもいくつもあります。その度に妥協していたのでは、思うような人生を歩むことはできません。選択や競争は人生の節目で必ず付いてくる。必ずしも「勝ち組」になる必要はありませんが、その中で夢や希望に向かって最大限に努力することの価値に気付くことが大切ではないでしょうか。 |
─教師の意識変革も必要になりそうです。 |
遠藤 |
我々教師は、普段は授業やクラス運営などに集中しているため、正直に言って、保護者のことを意識することはあまりないと思います。ただ、保護者会や三者面談の前、あるいは苦情が来た時にだけ保護者を意識するのではなく、日頃から情報をこまめに伝え、まず保護者の顔を学校に向けるように心掛けるべきではないでしょうか。 |
柴崎 |
生徒や保護者の希望を尊重するあまり、核心を突いた意見を言えない先生もいます。しかし、生徒が教師の助言に従うかどうかは問題ではなく、「今の成績では難しい」「お子さんにはこの大学は適切ではない」など、リスクはリスクとしてきちんと伝えるのが我々の役目です。我々が誠意を持って伝える努力を怠らなければ、生徒や保護者の気持ちが学校から離れることはありません。 |
山本 |
学校は塾や予備校ではありません。公教育だからこそすべき指導があります。授業や進路指導だけではなく、学校行事や部活動にも手を抜かないのは、一見、遠回りに見えるそれらの活動の中に、生徒が自立していく瞬間が多くあるからです。教師が一枚岩になって、そのことを生徒や保護者に伝えていくことが必要なのです。 |