特集)自立を支える「学校」と「家庭」の連携
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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情報をきちんと伝えるため 三者懇談をメインに

 すべての生徒の検討が終わると、いよいよ三者懇談となる。
 以前、三者懇談は、3年生後半の志望校を決める直前に1回行うだけだった。生徒、保護者それぞれとの二者面談は行っていたが、個別に保護者と面談をしても、教師のアドバイスが必ずしも生徒に伝わっていない、あるいは生徒に伝えたことが保護者に届いていないこともあった。時には、情報が曲解されて伝わり、親子関係が悪化してしまうこともあった。生徒と保護者と一緒に面談を行った方が情報は正確に伝わるという理由から、三者懇談をメインとすることにした。
 保護者に、「子どもの進路に対してもっと関心を持ってほしい」という思いもある。木村峰康校長は、近年の保護者の進路意識について次のように指摘する。
 「子どもは手を掛けた分だけ育ちます。進路指導も、取り組み内容だけでなく、どれだけ教師や保護者が手を掛けているかが重要なのです。今の保護者は、手を掛けずにお金をかけようとする傾向にあります。『塾に行かせた』『進学校に入学させた』というだけで親としての責任を十分に果たしたと思い、子どもと一緒に考えようとはしないのです。
 『進路は子どもに任せている』『学校に任せています』と言いながら、出願校を決める時になって『この大学はダメです』と意見を言う保護者がいます。それが、学期に1回、担任と子どもと同じ場で進路について話し合えば、子どもの将来を本気で考えるようになります。子どもと真正面から向き合い話し合うこと。それが保護者にとっての『手を掛ける』ではないでしょうか」
 そうした話し合いが最終的に子どもの自立を促すのではないか、と天尾先生は考えている。
 「親子でしっかり話し合った結果、生徒自身が自分の夢や適性、能力を考えて最終的な志望を決めたのであれば、それを受け止めるのが保護者の役目だと思います。もちろん、人生の先輩である以上、アドバイスはすべきです。それを踏まえて、最終的には子どもが自分で進路を判断できる状態をつくることが、子どもの自立を促すために保護者が果たすべき役割ではないでしょうか」
 親子が一度に顔をそろえることによって、親と子の考え方の違いが浮き彫りになることもあるようだ。3学年主任の福田勝伸先生は、次のように話す。
 「コミュニケーションが不足している親子は、三者懇談の場で初めて意見の違いが明らかになることがあります。また、親子で意見が一致しているように見えても、実は生徒の思いを保護者が過剰に受け止めて、かえって生徒は重荷に感じている場合もあります。意見の違いを浮き彫りにすることで、親子での対話のきっかけを提供するのも三者懇談の大切な役目です」
 ただ、保護者にとって、子どもの前では話しにくいこともある。その際には、保護者だけに残ってもらい詳しく話を聞く、あるいは時間を2つに分けて、前半を二者面談、後半を三者懇談と使い分けるなどの工夫をしている。

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