未来をつくる大学の研究室 クロマグロの特性を解明し配合飼料の開発から安定供給を目指す
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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高校生に伝えたいこと
予想を裏切るデータこそ研究へのモチベーション

 私が水産に興味を持ったのは、高校生の時にテレビでクロマグロが一尾何百万円もすると知り、「これは大もうけできる」と思ったことがきっかけです。しかし、水産学科で学ぶうちに種々の漁獲・漁船制限や多額の費用がかかることを知り、クロマグロを獲るのでなく、「魚をつくり、育てる」方に進もうと考えました。折しも、生き餌から配合飼料への転換(※4)が叫ばれ始めた時期で、配合飼料の研究は将来性のある分野だと思い、魚類栄養学を専攻しました。
 研究の過程では苦しいこともあります。クロマグロ用配合飼料の研究を始めた頃は思うようなデータが得られず、日々、プレッシャーを感じていました。しかし、研究で「楽しい」と感じるのも、期待とは異なるデータを得た時です。魚の種類は2万種にも及び、同じ種類でも系群や個体による差があります。そのため、予想外の結果が出ることもあり、それらを新しい発見や興味へつなげることに面白さがあるのです。
 高校生の頃に抱いた「漁師になりたい」という夢とは異なる道に進みましたが、大学で目的意識を見いだせたからこそ、現在の自分があると思います。今の学生はまじめで多くの知識を吸収して卒業しますが、「こんな研究をしたい」という目的意識が希薄であるように感じます。
 高校生の皆さんには目的意識を持って大学に進んでほしいと思います。入学時にはなくても、在学中に目標を定めてほしい。新しい研究もそうした活気の中から生まれ、形になっていくのではないでしょうか。

用語解説
※4 生き餌から配合飼料への転換 かつては、生の小魚をそのまま、あるいはミンチにして、魚の養殖の飼料としていた。しかし、現在では、生き餌は環境負荷や高コストの観点から、日本を含めて多くの国で法律によって使用が制限されている。

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