伊藤純一さん
Ito Junichi
近畿大大学院農学研究科水産学専攻修士課程2年
〈兵庫県・私立近畿大附属豊岡高校卒業〉
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大学院生が語る
代替飼料の開発で安全安価な養殖魚の供給を
Q:なぜ魚類栄養学を学ぼうと思ったのですか
A:
小さい頃から魚を捕ったり飼育したりすることが好きで、将来は漁師や水族館職員のように魚にかかわる仕事に就くことが夢でした。そのため、大学は水産関係の学科に進もうと考えていました。高校2年生の時に、近畿大の水産研究所がクロマグロの完全養殖に成功したというニュースを聞いた時は、驚くと同時に「これだ」と思いました。私も大学で魚の養殖について研究しようと、近畿大農学部水産学科に進学しました。
魚の飼料を研究分野に選んだのは、将来、飼料メーカーで仕事をしたいと思ったからです。大学4年生での研究室配属の時は、迷わず、魚の代替飼料について研究する水産増殖学研究室を選びました。
Q:現在の研究内容を 教えてください
A:
私は、水産養殖・種苗生産の世界的研究拠点の一つである和歌山県の浦神実験場でトラフグの消化吸収の研究を行っています。
フグには胃がなく、消化器官は腸だけなので、体の構造をとらえやすいというメリットがあります。魚粉を用いた通常の餌ではなく、植物性タンパク質の代替飼料を与えることで、消化吸収にどのような影響があるのかを調べています。フンを採取してタンパク質や脂質、糖質の消化率を測定したり、フグを解剖して腸の酵素活性を測ったりしています。
研究で大変なのは、生き物が相手であるため、飼育に非常に気を遣うことです。信頼性の高いデータを得るには、実験環境にも常に気を配り、健康な魚を飼育しなければなりません。水槽を毎日掃除し、水温や溶存酸素量をチェックして、飼育環境を最善なものに出来るように心掛けています。
夏から秋は、他の大学院生と共にマグロの飼育を手伝います。マグロは大量に餌を食べるため、朝5時から夕方6時までずっと餌を与えています。
Q:高校生へのメッセージをお願いします
A:
この研究が進み、代替飼料に関する知見が得られれば、環境に優しい飼料の開発、ひいては安全で安価な養殖魚の安定供給につながります。目標が明確な上、自分の配合した飼料でフグが毎日大きくなっていく様子を見るのは嬉しいものです。苦労以上に、やりがいを感じることの方が多いです。
私は目標通りに養殖魚の飼料を作る企業に就職が決まり、今は修士論文の執筆に専念しています。
浦神実験場では、初めて寮生活を体験しました。買い物にも車がなければ出掛けられないような場所にあり、しかも未経験の寮生活とあり、最初はここに来ることをためらいました。しかし、今は長い人生の一時期にこうした経験が出来て良かったと思います。
何となく大学に進むのではなく、自分の好きなこと、将来の職業をしっかり考えて大学を選んでほしいと思います。そして、その夢に向かって目標を立てて努力してください。もちろん、すぐに目標が出来る人ばかりではないと思います。まずは、「目標を立てよう」という気概を持つことが大切なのではないでしょうか。真正面から自分と向き合い、自分の可能性を信じて、何事にも妥協せずに挑戦してほしいと思います。
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