座談会 中学校内容の「学び直し」の課題と実践─英語を中心として─
谷口勝彦

コーディネーター

谷口勝彦

Taniguchi Katsuhiko

三重県立宇治山田商業高校

◎全日制。商業科・情報処理科・国際科を設置。大学・短大・専門学校への進学率は約6割。

小林眞人

小林眞人

Kobayashi Masato

愛知県立日進高校

◎全日制。普通科。4年制大・短大・専門学校・就職と進路先は多様。

前田健次

前田健次

Maeda Kenji

愛知県立鶴城丘(かくじょうがおか)高校

◎全日制。総合学科。4年制大・短大・専門学校への進学率は5割強。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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VIEW'S REPORT

座談会

中学校内容の「学び直し」の課題と実践
─英語を中心として─

新学習指導要領に、「義務教育段階での学習内容の確実な定着」が明記された。
中学校時代の学習内容が身に付いていない生徒に対して、学校現場ではどのように対応しているのか。
英語の指導で中学校の内容の「学び直し」を実践している3人の先生方にお集まりいただき、
現状と課題、具体的な実践内容について語っていただいた

あきらめていた生徒に新たな希望を持たせる

谷口 まず、お二人から、高校入学時点における生徒たちの英語学力の状況を教えていただけますでしょうか。
小林 中学校の内容の「学び直し」を進める上で難しいのは、生徒たちの英語の知識がゼロではないということです。「学び直し」を必要とする生徒は、さまざまな理由により、中学校できちんと授業を受けられなかった生徒が少なくありません。それでも、中学校時代に学んだわずかな英語の知識が断片的に残っているのですが、それが頭の中で整理されていないため、その上に知識を積み重ねていくことが難しい。例えば、3単現のsと複数形のsの区別がつかない、あるいは複数にはsを付けるという断片的な知識から「We plays」と表記してしまう。未整理のまま頭に残っている雑多な情報を整理することが、英語の「学び直し」の指導の意義の一つだと考えています。
前田 生徒の国語力の低さも、英語の習得の障害になっているように思います。文章を書かせても、一つの文章に別の話題が入り込んだり、楽しい、つまらないという以上に自分の感情を掘り下げて表現できなかったり。英語の学習を通して、言語の基本的な構造を理解することも、「学び直し」の重要な役割ではないでしょうか。
谷口 生徒の学習意欲の面はどうでしょうか。私の印象では、算数・数学は日常生活において必要性を実感する場面が多いため、生徒にその必要性が受け入れられやすいと思います。しかし、英語は「出来なくても生活に困ることはない」と考えているように感じます。実際、国によっては、英語の力が、学歴以上に働く機会に大きく影響を与えています。日本の場合は仕事を選択する場面で、また仕事を進める上でも、大企業でさえ英語が必要になる場面は少ないのではないでしょうか。
小林 大学入試を受けない生徒であれば、なおさら英語を学ぶ必然性は薄れます。生徒たちを学びに向かわせるには、どうしても「定期テスト」や「単位認定」という現実的な必要性で動機付けているのが実状です。
前田 確かに、日常生活の中で英語の必要性を実感する場面は少ないかもしれません。しかし、多くの生徒が英語を話したいという思いは持っています。「学び直し」が必要な生徒の場合、「ひょっとしたら自分も話せるようになるかも」という淡い期待は中学校時代に打ち砕かれており、勉強しても無駄、出来れば英語の勉強はしたくないという思いに取りつかれている。高校での指導は、そういう生徒たちに「自分たちにも出来る」という期待を持たせることから始めなければなりません。

中学生の英語の得意・苦手意識

ベネッセ教育研究開発センターの調査によると、中学生で英語を「苦手」と感じている割合は約6割に上る(グラフ1)。また、「苦手」と回答した生徒の中で、苦手と感じるようになった時期のピークは「中1の後半」であり、「中1後半」までに約8割の生徒が苦手意識を持つようになっている(グラフ2)。

グラフ1 英語の得意・苦手
グラフ2 英語を苦手と感じるようになった時期
出典:いずれも、ベネッセ教育研究開発センター「第1回中学校英語に関する基本調査報告書」(2009)より

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